第120号 第1会議室 | (2001/07/03)![]() ![]() |
● 参議院選挙への影響 都議選の結果から ● |
参議院選挙の前哨戦と言われる都議選が終わりました。結果的に見ると,小泉人気が自民党候補を押し上げる結果となったようです。ここでは,もう一度都議選の結果を分析してみて,それが参議院選挙で各候補に与える影響について考えてみたいと思います。 □小泉人気 この方の人気だけは,どうしようもないと言えそうです。「ハンセン病訴訟問題」などで成果をあげたものの,小泉首相が就任以来掲げている「構造改革」については,まだ具体的には何も成果を上げていないのにこの人気ですから。 この人気が都議選に与えた影響は,やはり絶大なものがあります。自民党の候補者は軒並みこの風を受けて上位当選を果たしました。ここはやはり影響があったといってもいいかと思います。 しかし,マスコミが取り上げるように,「自民勝利」であったかというとそうではないかもしれません。よく知られているように,森内閣の当時に都議選の候補者選定があり,候補者を絞ろうということで,比較的少なめの55名の公認候補で戦うことになりました。 そして実は,あまり知られていませんが,前回の都議選の結果では,「共産党躍進」と言われている中で,自民党候補は54名当選を果たしているということです。 今回の結果,55名中53名の当選を果たしましたが,実は前回の当選者よりも少ないということになります。この点からすると一概に「自民勝利」とは言えないかもしれません。 ただし,小泉人気が自民に全くなかったかというと,そうではなく,明らかに多くの候補者が上位当選を果たしています。つまり,あと何人も当選させるほどの風は吹かなかったが,当落線上からの票の上積みはあったとするべきでしょう。 □民主の伸び悩み 昨年の衆院選,東京で圧勝した民主党が伸び悩みました。当選者が13名から22名に増えたと言うことは結果的には伸びたことになりますが,前回の都議選は民主党が大きくなる前に行われたものです。 とすると,小泉人気の前で今の実力をきっちり出したと言えそうです。しかし,あまりに当落線上での争いが多いのはいただけないところではあります。 そして,公明党に負けたという事実は,都議会よりも地方への波及が大きいように感じられます。国政第2党といって,小泉首相と改革のスピードを競うといっても,地方では第2党にもなれないというのは印象が悪いように思われます。確かに,都議会では公明党が強いのは定説です。しかし,そういったことを差し引いても,全国に与えた影響は大きいと思います。 □共産の低迷 今回の選挙を一言でいうなら,「共産が負けた選挙」と言ってもいいかと思います。議席,得票率の低迷は目を覆うばかりのものでした。小泉首相に真っ向から反対を唱えて,また石原知事への反対も唱えてこの結果ですから,致し方ないのかもしれません。80%を超えるような支持があるところに反対を唱えたら,その反動は大きいと言うことでしょう。 しかし,見逃してはいけないのは,都議選で共産候補が訴えたのが,「消費税減税」,「シルバーパス復活」,「東京都における老人医療費全額補助」といった内容のことでした。現在の国や地方の財政赤字の状況や小泉首相の「痛みを伴う構造改革」に対する国民の期待感などからすると,少し肌合いの違う政策ではなかったかと思います。 □参議院選挙への影響 都議選が終わってから,よくテレビで,「都議選躍進→参議院選勝利」と定義付けされています。そのことはみなさんよくご承知だろうと思います。しかし,今回の都議選はどこが躍進したのでしょうか。確かに自民党には若干の風は吹いたように思われますが,それが躍進と片づけてよいものかどうかは,上にも書いたように疑問が残ります。 もし,小泉人気が今のまま続くようなら,これは各党にとっても驚異になります。 自民党が一番いい風を受けるかもしれませんが,気のゆるみが心配です。また,各党からのマークも一番強いものになるでしょう。複数議席の選挙区では,「自民は大丈夫だから今回はうちのところをお願いします。」といったような投票依頼が間違いなく増えそうです。その時に,自民党がもう一度引き締められるのかが重要だと思います。 民主党に関しては,明らかに逆風だと思われていた小泉人気が,実はそうでもないということがわかった都議選ではなかったかと思います。 それは,改革を志向しつつ自民党を支持しない有権者が増えているということが都議選での議席増になったということです。しかし,選挙が厳しいものには変わりはありません。そこで必要なことは,ある意味今まで風に頼ってきた選挙態勢から脱却して,泥臭い,地に足ついた選挙を行うことだと思います。 この改革の風は,他の政党にはさらに厳しくなると思います。きっちりした組織がある政党,党首を全面に押し立てるところなど,それぞれありますが,はっきり言えることは,小泉首相に賛成,反対のどちらであれ,きっちりした政策を打ち出して,小泉改革とどう違うのかやこれからの日本にどのような影響があるのかなどを訴える必要がありそうです。なんとなく小泉人気でおかしな改革になりそう,といった雰囲気だけではとうてい勝てるような選挙ではなさそうです。 ある意味,小泉首相の登場によって,政治に目を向ける人が増えました。ブームだからといって,その裏にある有権者の厳しい選別の目に答えられる候補者だけが勝利できる参議院選挙だと思います。 (吉田)
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