第123号 第1会議室 | (2001/07/23)![]() ![]() |
● 白票の価値を考える ● |
ここ数年の選挙でよく聞く言葉,「棄権するくらいなら白票を投じよう」。 実は,「バーチャル選挙対策本部」の初期の号にも, ------------------------------------------------------ みなさん,是非投票に行ってください。投票に行っても,入れるべき人物がいないのならば,是非白票でその意志を示してください。 投票は義務です。「投票に行った」ということ自体が大切だと私は考えます。不在者投票でも結構です。是非投票に行ってください。 ------------------------------------------------------ なんて,当編集部の鷲津のコメントがあります。確かに投票に行くことは大切です。意思表示が効くのなら,それもいいことでしょう。 しかし,最近,本当にそれでいいのかな?,と筆者は考えました。そこで,「白票」というものについて,考えを巡らせてみました。 □白票が投票されると喜ぶのは,だ〜れだ? いきなりですが,たとえばの話。 有権者が10人いて,2人の候補のうちから1人を選ぶという,小型の選挙をするとしましょう。多少イメージしやすいように,学級委員を投票で決める状況で,例えてみます。 学級委員選挙にAくんと,Bさんが立候補。ただし,Aくんは,なかよし3人組グループを形成しているので,その3人は,必ずAくんに投票するとします。また,Bさんにも親友がいるので,2人は必ずBさんに投票するとします。 で,あなたは,このどちらかに投票できる立場だとします。ただし,Aくん,Bさんの「親友」や「なかよしグループ」ではありません。どちらに投票するか,思案のしどころですね。 さてさて,ここであなたの行動が,Aくん,Bさんの当選確率にどの程度、関わるか,非常に単純な計算で求めてみましょう(本番の選挙はこんなにわかりやすくない)。 まず,あなたは普通にAくんかBさんのどちらかに,投票するとしましょう。 有権者が10人だから,過半数は6票。つまり,当選ラインが6票です。 また,いわゆる組織票は,Aくんが3票,Bさんが2票。つまり,浮動票は残りの5票ですから,当選ラインに到達するにはこのうち,Aくんは残り3票の浮動票,Bさんは残り4票の浮動票を得なければなりません。 これらから,わかりにくくて申し訳ないですが,当選確率を求めるとこうなります。 ------------------------ Aくん:(当選ライン6-必要浮動票3)÷(浮動票5+調整1)=4÷6= 50% Bさん:(当選ライン6-必要浮動票4)÷(浮動票5+調整1)=2÷6= 33.3% (16.7%は引き分け) ------------------------(注釈は適当なので,あまり気にしないよう。) さて,ここで状況を変えてみましょう。 ここであなたが,「AくんもBさんも,両人とも非常にうさんくさい。学級委員をやらせてもロクなことにはならない」と思っていたとします。 そこで,白票を投じることにしました(やっと来た)。 この場合,有効票は9票になるので,過半数は5票。つまり,当選ラインが5票です。 また,いわゆる組織票は,Aくんが3票,Bさんが2票のまま。つまり,残りの4票の浮動票のうち,当選するには,Aくんは残り2票の浮動票,Bさんは残り3票の浮動票を得なければなりません。 これらから,当選確率を求めるとこうなります↓。 ------------------------ Aくん:(当選ライン5-必要浮動票2)÷(浮動票4+調整1)=3÷5= 60% Bさん:(当選ライン5-必要浮動票3)÷(浮動票4+調整1)=2÷5= 40% ------------------------(注釈は適当なので,あまり気にしないよう。) 結局,あなたが白票を投じて,どちらがどのくらい得したのか?。 白票を入れる場合の確率から,投票した場合の確率を引いてみましょう。 ------------------------ Aくんが得したのは,60%-50%= 10% Bさんが得したのは,40%-33.3%= 6.7% ------------------------ Aくんの方が,若干得したことになります。 余談としては,60/50=1.2,40/33.3=1.2で,両人とも2割ほどで当選に近づいてるのが事実ですが,確率計算上では,あなたの白票は,組織票の多さに応じて,各候補に投票されているようなものなのです。 つまり,この原稿のタイトルである,白票が投票されると喜ぶのは誰か?というと,「組織票を一番多く持っている候補者」なのです。 ごちゃごちゃ計算してますが,現実から見るとなんのことはないです。 これは要するに,浮動票が減れば(投票率が下がれば),組織票を持つ候補が有利になるという,あたりまえのことだったりします。 ま,例のM前首相失言録の2000/6/20の「そのまま(選挙に)関心がないといって寝てしまってくれれば」って,あれですよ(笑)。 さあ,白票を投じようと思っていたあなた。ここで,あなたの選挙区で一番組織票を持っている候補が誰か,よく考えてみてください。その人は,あなたが一番投票したい人,良かれ悪しかれ,当選してもらいたいと思う人ですか?。 □白票は,意思表示になるか? よくよく考えてみれば,白票も誤票も棄権も,得票数のカウントの上では同じ扱いです。 もっと考えれば,白票を投じても,あなたが日本国民でなくても,得票数のカウントの上では同じ扱いです。ただ,もちろん,投票率などの他の指標には出てきますが。 これだけの話では,白票の存在意義はあまり無くなってしまいます。 では,なぜ白票を投じるのか?。 冒頭にも書きましたが,その理由が,白票は「誰にも入れたくないぞ,という意思表示」だという話です。 まあ,確かに「政治に関心があって投票する意志がある」から票を入れる,「どの候補者も当選するにふさわしくない」から誰にも票を入れない,という対極にある2つの意志を満たすのは「白票を入れる」という選択肢ぐらいしかない,といえば確かにそうでしょう。 そこで問題となるのは,「候補者の方がその意志を受け止めるか?」ということ。 結論から先に書きましょう。 「ほとんどありません」 こう書くと実も蓋も無いようですが,経験上の事実です。 筆者も,いろいろな選挙を見てきましたが,白票に関しては,「当選確実」が付く前は「今回は無効票が多いなあ」ぐらいのことは考えますが,数時間すると,当選した陣営はバンザイ三唱した瞬間に忘れてますし,落選した陣営もこれから数ヶ月間どういう事態になるのか,不安で頭がいっぱいで,やっぱり記憶の片隅に追いやられます。 ただし,例外もあります。 昨年のペルーのフジモリ氏vsトレド氏の大統領選決選投票の際には,「不正は無用」と書いた無効票・白票が30%を越え,その後の経緯は皆様ご存知の通りになりました。 例外の例外かどうかはわかりませんが,同じく昨年のアメリカ大統領選挙でも,パンチ穴がずれたとか,穴が小さいとかで,無効票の数をブッシュ氏とゴア氏がやりあっていましたが,あの後ブッシュ氏は政策転換したのかどうか…微妙なところですね。 これらは,選挙結果に関係しているから,白票を意識するのでしょう。国内でも何例かありますが,わずか数票差で当落選が決まるような選挙では,白票に込められた意志は両候補者に強烈に印象づけられるはずです。 このように,当落選に明らかに影響を与える票数まで白票が増えれば,候補者は意識せざるを得ず,なんらかの変化が現れる”かもしれません”。 ”かもしれません”とは自信がないからですが,「権威のある優秀な政治家さま」にかかれば,何があるのかわからない,というのがその理由です。政治家に関わらず,世の中そんなに「いいひと」ばかりではありません。 彼ら政治家の一部(全員ではないですよ)にかかれば,「戦力をもたず」と憲法にあるのを戦力OKとし,不信任案否決を「内閣が信任されたわけではない」とするがごとく,最初は「有権者の意志を受け止め,今後はその意志を政治に反映し…」と曖昧に言うだけ言って何にもしないとか,「何にも書いてないだけの白票に政治不信の意志があると誰が決めた」と言い逃れる,といった展開はいくらでも考えつきます。 そんな抜け道を用意するくらいなら,署名を集めて公式に要求を突き付けるような,はっきりした方法をお勧めします。白票での意思表示では,「拘束力が無い」という弱点をカバーできないでしょう。 このように「白票では効力不足だし,組織に支えられた候補者を”知らない間に”有利にしている」というのが,筆者の見解です。 白票が,完全に無駄な票とは思いませんが,武器としての威力は,きちんとした1票には,遙かに劣ると思います。自分の手元にあるせっかくの票ですから,八方美人のように全候補者に分けてちょっとずつ入れるのではなく,1人の候補者にまとめて入れてあげるのが,一番効果的な使い方ではないかと,私は考えます。 自分が白票を投じるか,友人知人が白票を投じようとしているかに関係なく,一度,投票の前に,この白票の意味について,考え直してみてはいかがでしょう?。 ただし一点,注意しておきますが,私は読者のみなさまの投票に関して,指示をする立場にありません。私の意見はご参考にしていただければありがたいですが,それ相応の意志のある方は,その考えに従うのがいいことだと思います。 また,このあたりについては,賛否両論あるかと思います。 ご意見等は末尾にあるメールかoffice-SPC掲示板( http://cgi.officespc.com/wforum/wforum.cgi )にて伺いますので,遠慮なくどうぞ(特に誌面への掲載等は考えておりませんが)。 (中沢)
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