47号 第1会議室 (2000/01/24)up down
   ● アメリカの選挙
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 今年の12月18日にアメリカ大統領選挙が行われます。今後,徐々に日本のマスコミ報道も加熱していくことでしょう。
 日本にとってアメリカは,切り離すことのできない存在にあります。そこで,アメリカの選挙制度や日本の制度との違いを,Q&A方式で説明していきます。


■Q1.
 米大統領選挙はどのような流れで行われるのですか?

□A1.
 米大統領選では,まず各党(民主党・共和党・改革党)の統一候補者を絞ります。そのために,党ごとの予備選挙,もしくは党員集会で各州の代議員が選出されます。そして党全国大会が開かれ,党の大統領候補者が決定します。
 その後,本選挙戦として,大統領選一般投票,さらに一般投票により選ばれた各州の選挙人団が大統領候補に投票を行う選挙人投票が行われます。このうち誰が次の大統領になるかは一般投票で決まるので,一般投票が事実上の大統領選投票となります。



■Q2.
 Q1で出てきた,「予備選挙」「党員集会」「代議員」「党全国大会」「一般投票」「選挙人団」「選挙人選挙」というのは,どういったものですか?

□A2.
○予備選挙と党員集会
 党の統一候補者を決めるには,州によって2通りの方式を取っています。1つは予備選挙であり,もう1つは党員集会です。
 予備選挙は,各州の有権者が候補者に投票する方式であり,結果は一日で決まります(投票日は州によって異なる)。党員集会は地区,郡の集会での討議・投票を通じて候補者ごとの支持を積み上げ,最終的に集の党大会で代議員を選ぶ方式です。

 このプロセスが数週間,数カ月にわたって展開されます。最初はどの州も党員集会を開いていましたが,党員集会が党幹部の意向や政治的工作に左右されやすいなどの理由から,予備選挙を採用する州が増えています。96年の大統領選挙においては,各州で選出された代議員,民主党4296人,共和党1986人のうち予備選挙で選出されたのは,民主党で73%,共和党で85%に上ります。


○代議員団
 予備選挙は,その党の全国大会に出席する代議員を選ぶための選挙です。
 州ごとに,各大統領候補を支持する代議員団がおり,予備選挙では有権者は大統領候補ではなく,代議員団を選ぶことになります。
 党の統一候補は,党全国大会で過半数の代議員を制した候補者に決められるため,州ごとに代議員を獲得していって,全代議員数の過半数を獲得する候補が事実上の統一候補となります。代議員の多くは選挙戦で自分の党の候補のために働く活動家でもあります。


○党全国大会
 党の大統領候補者は全国大会で指名されます。が,実際は予備選挙か党員集会によって選出された代議員の支持候補は明らかになっているので,この時には党の統一候補は決まっており,党大会は追認の場に過ぎません。しかしそれ以上に,党の基本方針や政策綱領を定める機会,党員の結束の再確認,副大統領の指名という点において,大きな意味を持っています。


○一般選挙と選挙人団
 一般選挙は,有権者が直接正副大統領を選挙しているわけではなく,各正副大統領候補を支持する選挙人団を選挙しています。
 選挙人団数は,各州の上院議員数+下院議員数で,上院議員数は50州それぞれ2名ずつ,下院議員は人口によって配分されます。例えば,人口最大のカリフォルニア州は54人,最小のノースダコタ州は3人です。
 選挙人団総数は,上院議員数100人,下院議員数435人,それに首都のあるコロンビア特別区の特例3人を合計した538人になります。

 この選挙では,各州ごとに1票でも多く票を獲得した候補者が,その州に配分された選挙人団を全部獲得します(勝者独占方式)。
 つまり,勝敗の決め手は,あくまで選挙人獲得数であり,一般投票の獲得票数あるいは得票率ではないため,一般投票の得票数で勝っても,選挙人獲得数で負け,大統領当選を果たせないということもありえます。実際,1876年と1888年の大統領選挙では,そういうことが起こっています。


○選挙人選挙
 一般投票で選出された選挙人団による投票です。とは言っても,一般投票で選ばれた選挙人団は予めどの正副大統領に票を投じるかの態度を明確にしているので,この投票は一般投票の結果を追認する形式にすぎません。
 全米の選挙人538人の過半数の270票以上を獲得した者が大統領となります。



■Q3.
 今年の大統領選挙の主な日程を教えてください。

□A3.
 全米に先駆けてアイオワ州で,ちょうど今日1月24日に党員集会が行われ,続いて2月1日にニューハンプシャー州で予備選挙が行われます。
 いずれも人口の少ない小さな州ですが,伝統的にトップを切って行われています。予備選挙の最初のバロメーターとしてマスコミの圧倒的な関心がそこに集まります。予備選挙と党員集会は6月まで行われますが,伝統的には「スーパーチューズデー」と呼ばれる,3月上旬の南部諸州が一斉に予備選挙を実施する日が山場になっています。
 今年の場合,その3月7日と14日に南部諸州にカリフォルニア州,ニューヨーク州などが加わり,この選挙で党の統一候補が事実上判明するといわれています。

 党全国大会は民主党が8月14日〜17日,共和党が7月29〜8月4日まで行われ,9月から11月までの約2ヶ月間が本選挙戦キャンペーンになり,今年は11月7日が一般投票日で,12月18日が選挙人投票日となります。つまり,11月7日にはアメリカ大統領は決定するということになります。



■Q4.
 今年はどのような人が立候補を予定しているのですか?

□A4.
 民主党では,ゴア副大統領とブラッドリー元上院議員の一騎討ちです。現在の世論調査では,52%対38%で,ゴア氏が優勢と言われています。
 共和党はブッシュ前大統領の長男のジョージ・ブッシュテキサス州知事の他,「フォーブス誌」主幹のフォーブス氏,マケイン上院議員,レーガン大統領の内政担当補佐官であったバウアー氏などが名乗りをあげています。現段階ではブッシュ氏が圧倒的に優勢です。また改革党では,共和党から鞍替えしたコラムニストのブキャナン氏と,ニューヨークの不動産王との異名を持つトランプ氏が表明しています。
 世論調査によると,ゴア,ブッシュ,ブキャナンの争いになった場合,ブッシュ氏がゴア氏を10ポイントあまりリードしています。



■Q5.
 選挙にはどのくらいお金がかかるのですか?

□A5.
 近年,テレビコマーシャルを利用した選挙運動の普及により,選挙費用は飛躍的に高騰しています。政治資金規正法には選挙費用の上限は設けられていません。96年の大統領選挙では,両党合わせて12億ドルを超えています。また個人ベースでも,1960年に共和党から立候補したニクソンのつかった選挙費用は選挙戦を通して1,000万ドルでしたが,今年の選挙ではこのようなデータがあります。

・選挙資金レース(99年1月1日から9月30日まで)

 候補者      集金総額     支出総額    残金
--------------------------------------------------------------
<共和党>
ブッシュ     $57,702,374   $19,976,274  $37,726,100
フォーブス    $20,834,197   $18,971,104  $ 1,826,357
マケイン     $ 9,411,742   $ 7,302,308  $ 2,109,433
バウアー     $ 6,297,652   $ 2,936,724  $ 284,433
<民主党>
ゴア       $27,413,696   $15,209,101  $12,176,919
ブラッドリー   $19,172,361   $ 8,511,155  $10,701,766
<改革党>
ブキャナン    $ 3,885,824   $ 3,740,911  $ 144,913

連邦選挙委員会(FEC)資料より

 ブッシュ氏は選挙戦を前にして,20億円以上を既に使っています。やはりアメリカはスケールが違います。



■Q6.
 選挙費用は主にどこから集めるのですか?

□A6.
 選挙資金は大別して3つの方法で調達されます。
 第1が個人献金で,アメリカでは選挙資金調達は個人献金によることが伝統的になっています。ただし規正法により,1人の候補者に1つ選挙当たり1,000ドルまでとされています。

 第2の方法が団体献金ですが,規正法では企業・団体からの直接の献金を禁止しています。しかし,企業の雇用者,株主や団体メンバーが政治活動委員会(PAC)を組織しての自発的な献金は認められており,事実上の団体献金となっています。
 PACは候補者1人に5,000ドルまでしか献金できませんが,組織化は無制限なので実際には多額の献金ができます。PACの組織数,献金額の増大は,PACの政治的影響力の増大を意味し,それによる弊害が問題となっています。

 第3の方法が政府の補助金です。政府補助金は予備選挙,党全国大会,本選挙と3つの段階に分ける,マッチング・ファンドという方式を取っています。96年選挙では,民主,共和両党に1236万4000ドルが,本選挙に向けて両党候補者に6180万ドルが交付されました。


■Q7.
 主な選挙活動はどのようなものですか?

□A7.
 米大統領選挙の中で最も重視される選挙活動は,何と言ってもテレビの利用です。遊説だけでは広い選挙区全てを網羅することができないことので,マスメディアが重要視されています。
 テレビの活用には2通りあり,1つは各州の予備選挙などイベントの報道を利用するやり方であり,もう1つは候補者自らが時間帯を買って,コマーシャルを放送するものです。しかし,Q5にも示したようにテレビを利用した選挙運動は選挙費用の高騰を引き起こしています。1968年にはテレビとラジオで1800万ドル支出されましたが,96年にはテレビだけで約1億ドル支出されています。

 テレビによる大統領選挙報道のクライマックスといえるのが,党大会と大統領候補者討論会です。前者は全米に生中継され,選挙への関心を盛り上げます。後者は選挙戦終盤の重要なイベントであり,常に視聴率が20%を超えています。

 特に討論会については,1960年の民主党ケネディvs共和党ニクソンの時は,視聴率が60%を超え,この放送をが決め手となってケネディが勝ったと言われています。

 また近年は,テレビの中で懸案や課題に積極的に取り組む姿勢や自らのクリーンさをアピールする一方で,対立候補を誹謗,中傷する,いわゆるネガティブ・キャンペーンが行われています。ネガティブ・キャンペーンは確かに対立候補にダメージを与える上では有効ですが,反面,視聴者に嫌悪感や政治への不信感をもたらす結果ともなり,批判が高まっています。



緒方


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