第56号 第1会議室 | (2000/03/27)![]() ![]() |
● 緒方の素朴な疑問にお答えします ● |
今週は,以前より告知をしていた,読者の皆様からいただいた選挙,政治に関する素朴な疑問に対して,私緒方がお答えしていきます。衆議院の解散総選挙を控えて,少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。 ■Q1. 公職選挙法に関しての良い参考書はありますか? (Yさん) □A1. いくつかの文献を紹介します。 ●「公職選挙法の解説」 (一橋出版・吉田善明著 )全124p 公職選挙法の仕組みをじっくり知りたい場合にはこれが良いと思います。本書は条文を要約した形で構成されており,それぞれの項は,「条文」「用語解説」「解説」「資料」の順に解説してあります。 ●「衆議員選挙の手引き」 (ぎょうせい・選挙制度研究会編)全480p 衆議院選挙に限定した著書としては,この本が広く使われているようです。本書は,最新の制度のもとで,主として候補者や運動員の方々が,選挙運動を展開されるに当たって留意すべき事柄や,立候補に際しての各種の届出などについて記述しています。 ただし,480ページと非常に量が多く,かなり文章が難しいので,数回の選挙経験者向けと言えます。 ●「実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法」 (ぎょうせい ・山本信一郎著)全340p 本著は初心者向けに書かれたものです。10回にわたる改訂をしていますので,改正など現在の流れにもついて行けています。 ●「必ずわかる図解 選挙制度のしくみ」 (ナツメ社・選挙制度研究委員会編著)全189p 選挙の種類や立候補・投票・開票の流れから「公職選挙法」「政党交付金」「定数是正」「区割法案」「世論調査」「住民投票」「繰り上げ当選」「連座制」までを,浅く広く解説しています。図解にもなっていますので,初心者向けといえます。 ■Q2. 衆議院選挙の際の「重複立候補」と「惜敗率」ってどういうことですか? (N.Yさん) □A2. 重複立候補とは,小選挙区に届け出た各政党の候補者のうち,比例代表選挙の名簿にも登載することです。小選挙区に届け出た各政党の立候補者は,比例代表にも重複して立候補できます。このため,小選挙区で落選しても比例代表で当選することもあります(いわゆる復活当選)。 比例代表の立候補者の順位は,重複立候補者の場合,何人でも同じ順位に名前を並べることができます。 このような,比例代表での同一順位での,候補者の当選の優先順位は,「惜敗率」によって決まります。惜敗率とは,それぞれの小選挙区における「その候補者の得票数」の「最多得票者の得票数」に対する割合のことです。 ○惜敗率の仕組み 比例代表選挙の当選人となるべき順位は次の通りでです。 第1位…甲 第2位…A,B, C(この3名は重複立候補で,同一順位) 第5位…乙 選挙の結果は,小選挙区選挙ではAさんが当選,Bさん,Cさんは落選しました。落選したBさん,Cさんの惜敗率はBさんが80%,Cさんが90%でした。比例代表選挙では,この政党は2議席を獲得しました。 このようなケースの場合,この政党の比例代表選挙の当選人は,以下のように決定されます。 (1). まず,名簿登載順位第1位の甲が当選となります。 (2). 名簿には第2位に同順位としてA,B,Cの3人が登載されていますが,小選挙区選挙で当選したAさんは,小選挙区の当選が優先され比例代表選挙の名簿には登載されていないものとみなされますので,第2位はB,Cのみとなります。 (3). 次に,惜敗率によりB,Cの当選人となるべき順位を決めます。惜敗率はBさんが80%,Cさんが90%ですので,当選人となるべき順位は第2位がCさん,第3位がBさんとなります。 (4). この政党は2議席を獲得しましたので,Cさんがもう1人の当選人となり,第3位以下のB,乙は落選となります。 ■Q3. 今度知り合いが立候補することになったので,家庭教師をしている生徒の親に投票の依頼をしようと思っていますが,これは選挙違反になるのですか? (A.Mさん) □A3. 選挙期間中であれば,全く問題ありません。しかし,事前運動中になると,微妙になってきます。 何度かメルマガでも掲載しているように,事前の段階では,『候補者の名前』・『選挙の特定』・『投票の依頼』の,3要素全てが含まれている場合,完全にアウトとなります。どれか2つだけであれば,グレーゾーンになりますので,この場合,「実は今度,私の知り合いの○○が国政にチャレンジすることになりました。またよろしくお願いします。」ぐらいが適当とされます。 ただし,実際は「国政にチャレンジする」なんていう言い方をする人はほとんどいないでしょう。 大部分の人は,「次の衆議院選挙に私の知り合いの○○が立候補することになりました。ぜひこれからよろしくお願いします。」という感じで話すのではないでしょうか。この場合,相手との信頼関係などを考えつつ,全ては自己責任の上で行うことになります。このように言うことは,厳密には選挙違反になり得ることを認識しておく必要があります。 ■Q4. 韓国の総選挙のように,全ての議員の,これまでの汚職経験や投票したくない人の調査結果の公表など,いわゆる「落選運動」を日本でもしてみたいと思っているんですが,法律上は何か問題がありますか? (I.Sさん) □A4. 公職選挙法13章では,「単に特定の候補者を当選させないために行う限りは選挙運動にはならないが,その行為が他の候補者を当選させることを目的としている場合は,選挙運動になる」と書かれており,また138条3項では,「人気投票の公表の禁止」についてが書かれています。 韓国のような「落選運動」の目的は,調査結果の公表によって,成績の悪い特定の候補者を落選させることであり,それは結果として,汚職などをしていない候補者を当選させることになります。 よって,日本でこのような行為を行う場合は「選挙違反行為」となる可能性が高くなります。ただし,具体的に定義されているわけではありません。 選挙管理委員会にも問い合わせたところ,「選挙違反行為だとは思われるが,『落選運動』事態の条文がなく,断言することが出来ない。最終的には警察裁判所の判断に委ねられることになる。」との回答をいただきました。 今のところ前例がないということですので,やる気と勇気のある方は,1度行ってみるのも手では? (もちろん,全ての行為は「自己責任」のもとで行ってください。office-SPCでは,一切の責任を負いません。) (緒方)
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