第78号 第1会議室 | (2000/09/14)
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● 地元秘書の1日 ● |
最近,秘書の話題がマスコミを賑わせていますね。 一つは,森田健作衆院議員の私設秘書が票の取りまとめのために地方議員2人に100万円ずつ渡そうとした疑い。もう一つは,山本譲司衆院議員が国から賄われる公設秘書の給与を,事務所の経費に流用していたというものです。 特に,森田健作議員の事件以来,「拡大連座制」という言葉を良く耳にされるかと思います。ご承知の方も多いかと思いますが,この制度は秘書が犯した罪を,認識していた,していなかったに関わらず,議員にも責任が及ぶと言うものです。今回の件では,森田議員が失職する可能性が大きくなっています。 このように,良くも悪くも(と言うより悪くばかりですが),最近「議員秘書」がクローズアップされています。今週はタイミングよくテーマが「秘書」についてです。 私は今回,先の衆議院議員選挙で初当選した,知り合いの議員の事務所へ足を運び,秘書Mさんに1日密着し,秘書の動きを観察させて頂きました。 <秘書Mさんメモ> ・生年月日 1967年生まれ 33歳 ・議員とのつながり 議員の高校の後輩にあたり,議員が高校に講演に来た際に知り合う。民間企業にいたが,今回の衆議院選挙を前にした1月に事務所を訪れた時,事務所スタッフが一人やめたことを聞かされ,議員から直接依頼を受ける。次の月には会社を辞め,「秘書になってしまった。」 ・事務所での立場 事務所は男性3人,女性2人。スタッフを統括する立場にある。また日程関係の処理・把握,議員付きなども行う。 □Mさんの1日のタイムスケジュール 8:50 出勤(事務所の鍵を開けるのは一番早く来た人) 〜9:15 掃除,新聞を読む。 Mさんいわく,「本来は9時までに掃除も終わり,新聞にも目を通し,9時には仕事が開始できるようにしなればならない。ただ,いつも夜が遅いのでなかなか難しいです。」 9:30 議員が出張先から地元に戻ってくるため,駅へ迎えに。 10:00 駅着 事務所から駅までほとんどが裏道。渋滞している幹線道路は全く通らず。基本とはいえ,さすが地元を知り尽くしている秘書。 10:15 議員駅着。そのまま会合へ。 車で移動の間,議員に見せなければならない資料の中でも,早くに目を通してもらいたいもの(日程関係など)を手早く確認。また,議員が出張で数日地元を空けていたので地元紙の記事を見せ,その間に地元に起きたことを簡単に伝える。 「車の中は議員が電話をかけそうなときには話を切り出さないよう心がけています。タイミングをつかむのが大変です。」 10:40 会場着。開始より10分遅れ。 「こちらとしてはもちろん遅れないように行くことがベストであるし,1分1秒でも早く着くように努力はしているが,議員になってからはやむを得ず遅れることが多くなった。理解していただける人は多いが,時には遅れたことに対し激しく注意を受けることも」とMさん。 この会合の間Mさんは,自分の顔を売るため,多くの人に名刺を配る。なんと言っても1年生議員の秘書。いかに多くの人と知り合い,議員とその人以上に関係を密に出来るかが,議員の代理として話を進めていくための大きな鍵になる。 12:00 会終了。議員を乗せて事務所へ向かう。 12:45 事務所着。事務所内で昼食。(スーパーの弁当) この時,事務所にいる時間は昼食時間を含め約45分。この間に,いかに多くのことを議員に伝え,判断を聞けるか,が勝負だと言う。 13:35 事務所発 14:00 幹事会 15:00 幹事会終了。事務所へ この間は,議員はずっと色々なところへ電話をかけていた。Mさんは一言も話さず,議員との会話はほとんどなかった。 15:40 事務所着 ここからはデスクワーク。車の中で議員から返答のもらった日程について,先方への電話連絡,お祝いメッセージの作成をスタッフに指示する。そして,日程関係の資料をファイリングし,出席するものに関してはパソコンの日程に入力していく。 17:00 来客対応 上記の仕事中に,来客。秋に集会を開くため,その会場の調整をしており,宴会担当の方が来て,日にち・規模・値段について交渉。 17:40 来客前の仕事に戻る。 18:15 デジカメのデータ編集 これまでの仕事に一段落をつけ,今度は先週行った集会のときにデジカメで取った画像を,パソコンに取り込み,わかりやすいように整理していく。これらの画像は,朝駅に立つときに配るビラ,年に3〜4回発送しているニュース,随時送信しているFAXニュースに載せていく。 「やはり文章だけより,写真があったほうがその会の雰囲気なども読み取れると思うので。」 19:10 ミーティング 事務所スタッフが帰る前に,議員からミーティングをしようという要請。出張で,数日事務所を空けていたので,事務所での出来事を聞き,また議員が出張先で感じたことも逐一スタッフへ報告する。また,1ヶ月間のスパンで東京にいるときと地元に戻っているときを報告。 19:40 今日の仕事の終わったスタッフがぱらぱらと帰宅。Mさんは今日の仕事の整理と,明日自分がしなければならないことの準備。 20:10 仕事終了 このときには男性秘書と2人。これで仕事が終わり,かと思えば20:30から支持者とご飯を食べに行くとのこと。「これは仕事じゃないですよ」とは言うものの,やはり気をつかうのではないかと,勝手ながら心配してしまう。 ここでMさんと別れる。 □密着体験記 私は選挙前に事務所に入った経験はありますが,選挙のない時期に事務所にいたことがないため,とても新鮮でした。やはり忙しいという印象を受けました。 上には入ってませんが,上記の仕事以外に電話が鳴ることの多いこと多いこと。車の中,事務所の中,至るところで電話が鳴っていました。一番大きな仕事かな,と感じました。 Mさんに「仕事は楽しいですか?」という素朴な質問を投げかけたところ,「はい,楽しいですよ。もちろん大変ですけど。私は民間企業にもいましたけど,これだけ変化の多い仕事はまずないですよね。その日その日にやることが変わっていくんですから。」 またMさんはこうも言ってました。 「地元秘書の一番大きな仕事は議員の票を守り,そして増やすこと。私たちがやっている仕事の全ては最終的にはそれにつきます。これまでより確実に議員が地元にいる時間は減りますから,支持者としては議員になったら自分たちの事を考えなくなった,と思いがちです。それをいかにフォローするかが重要だと思います。 ニュースを発送するにしても,いかにして議員が東京で一生懸命活動しており,それが直接的には皆さんの生活に影響は与えられないけれど,最終的にはつながるということを感じてもらえるかを意識します。応援していた人が国会議員になったら,誰でも自分にとって有益になると思いますよね。それをカバーするのは地元スタッフ以外いませんから。」 これらの話を聞いて,秘書Mさんの心構えの素晴らしさとともに,彼らのボスである議員の偉大さを感じました。今まで数多くの事務所を見てきましたが,ここまでボス(議員)を尊敬しながら仕事をしている事務所はないと思いました。 やはり議員として最も大事な仕事の一つは「一番の身内(事務所スタッフ)の心を捉えること」ですね。 (緒方)
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