87号 第1会議室 (2000/11/06)up down
   ● 政治家の引き際 -引退-
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 「政治家の引き際」と言えば,「スキャンダルを起こして身を引く」ことだと言うのが一般的になっています。しかし政治家と言えども,年齢を考えたり,プライベートを優先させる結果として自ら,後継者へと道を譲っていく人たちも多くいます。
 今回は「引退」を決断する時とは,どのようなときなのかを考えてみたいと思います。

 政治の世界には,「50,60はハナタレ小僧」というような「ことわざ」が今も存在しています。これはもちろん50歳や60歳という年齢では,まだまだ経験が足りないという意味です。
 しかし最近の政治の流れを見てみると,30代や40代の若手がしばしば活躍をしていますし,当選を果たしています。またいくらベテランと言われていても多選批判によって,経験を訴えても落選する大物議員もいます。

 そんな中,先の総選挙でも村山元首相をはじめ,何人かの代議士が引退をされました。その引退にはどういったパターンがあるのでしょうか。


□引退する議員

 竹下元首相の例もあるように,高齢になり病気を患うことで,心身ともに気力を失って後進に道を譲ることがあります。残念ながら,竹下氏はその後亡くなられてしまいましたが,自らが進退を決する場合,後継者への影響力は俄然強くなります。これは首相の交代劇でもよく見られるパターンです。

 政治の世界では,病気になったということを公表することがタブーになっており,それを公表するということ自体が,かなりの決断を要します。よく大物議員になると,かかりつけの病院では,偽名で入院という手段までとるほどです。

 国会議員ともなれば,その日程は過密で,分単位で行動しなければなりません。これは,健康を害している議員にとっては,命を削って政治活動をしていることに他なりません。
 高齢で病気がちのために引退を決めた議員の,どのコメントにも「気力を失った」とあるのは,自らの命が権謀術数渦巻く政界で生き抜くには,弱くなってしまったと自覚するからでしょう。


 では,病気ではなくて,自ら引退を決する議員には何があったのでしょう。

 よくあるのが自分の無力さを知ったとか,ばかばかしくなったといったことです。
 いくら政治家といっても,誰もが首相になれるわけではありません。衆議院であれば,1/500という,ちっぽけな存在です。
 いくら理想に燃えて議員になったとしても,やはり民主主義のルールに則った議会では,多数を占めたものが有利になります。そうなると,自分の理想と現実のギャップに苦しむことになり,ついつい放り投げてしまいたくなるということでしょう。

 ですから,最近いろいろなところでこれからの時代,やりがいがあるのは地方の首長だというのを聞きます。これなども首長という一種の大統領のような立場にあれば,思い切って自分の理想の政治に打ち込めると思うからなのでしょう。


 また,もうひとつとしては有力な後継者が育ったということがあります。
 これは純粋に「自分は○歳までは議員をするが,それ以降は世代交代を図っていかなければ政治が停滞する」と認識しているのでしょう。

 最近の閉塞感のある政治の状況を見れば,明らかに人材の新陳代謝が不足していると言えます。何も若いから良いわけではなく,適度に新人が当選する環境を作らない限り,政治が既得権益と結びつきやすくなり,ダイナミックな政策を展開しにくいということになります。
 政治家の中にはごくわずかですが,そのことを理解し,自らも時代を動かす一つの歯車と認識して,引退を選ぶ人たちもいることは確かです。

 理由はどうあれ,自らが身を引く決断をするのは余程の覚悟がいります。政治の世界が長くなればなるほど,世話になった後援者の話も聞かなくてはなりませんし,自分ひとりで決断できる状況にはなくなります。
 しかし,そこをあえて乗り越えて後進に道を譲るというのは今の政治の世界では必要なことかもしれません。


□引退させられる議員

 引退する議員ではなく,引退させられる議員とはなんでしょう。

 例えば比例区選出議員で,自分の支持母体が後継者を作ったから引退させられるということがあります。
 大きな組織であるほど,この状況は多くなります。これは,政治の世界を組織の目で見ている証拠でもあります。そのため政治家自身が,ついつい組織優先になってしまうようになります。

 また自らの後援会が出馬を支持しなかったなどという身内の中でのゴタゴタもあります。これは純粋に,年齢的なものや人柄といったことに起因してきます。自らの後援者ほどその政治家をよく見ている人はいないのですから。


 このような議員にある意味共通するのは,自分を最後まで応援してくれる身内に対してフォローを怠ったということがあります。政治家は誰もがそうですが,この人はわかってくれるだろうというような人には,ついつい手間をかけなくなったりするものです。
 しかし,そういう人たちこそが利害を超えて応援してくれるのです。そのことを忘れ,自分勝手な行動を繰り返すと,引退というしっぺ返しを食らいます。


 このような例はごく少数です。しかし,そのような身内から引退勧告をもらうような議員は,政治家としては失格なのかもしれません。


吉田


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