第92号 第1会議室 | (2000/12/11)![]() ![]() |
● 内閣改造を考える ● |
○今回の内閣改造 12月5日,新内閣の閣僚が発表されました。 マスコミ等において「重量級内閣」などと呼ばれるように,首相経験者2名(自民党総裁経験者で言えば3名),また各派閥の幹部が入閣するなど,なんとか内閣の求心力を回復しようとした人事になったのではないかと思います。 さて,今回の組閣は,ご存知のように来年1月6日からの省庁再編を念頭においたものです。 もちろん,今日現在ではまだ,既存の省庁の大臣および長官という肩書きになります(下記参照)。 内閣総理大臣 内閣官房長官 法務大臣→法務大臣 外務大臣→外務大臣 大蔵大臣→財務大臣 文部大臣,科学技術庁長官→文部科学大臣 厚生大臣,労働大臣→厚生労働大臣 農林水産大臣→農林水産大臣 通商産業大臣→経済産業大臣 運輸大臣,建設大臣,北海道開発庁長官,国土庁長官→国土交通大臣 郵政大臣,自治大臣,総務庁長官→総務大臣 環境庁長官→環境大臣 防衛庁長官→防衛庁長官 国家公安委員会委員長 金融再生委員会委員長 その他の国務大臣として 行政改革担当,北方・沖縄担当 経済財政担当 科学技術担当 の各特命担当大臣(特命相)がおかれています。 また,来年からの省庁再編をにらんで,副大臣となる22名の政務次官,および26人の政務官も内定しました。 これは,政治主導による行政を目指したものです。 こうして見てみると,21世紀に向けて新たな日本の行政を担う新しい内閣の「形」はできてきたのかもしれません。 しかしながら,本当にあらたな「形」の内閣が機能するかどうかは,これからの実質的な運用にかかっているといってもよいのではないでしょうか? ○内閣の意味合い 一昔前の各閣僚の就任記者会見では,よく「私は素人なんで・・・。これから頑張って勉強します。」てな具合の発言をする人が結構いたもんです(ちなみに,今回も約1名この手の発言をする方はいらっしゃいましたが・・・)。 最近は,こうした人も少なくなってきたとはいえども,まだまだ内閣における各政治任命のポストは,名誉職的なものが多いのではないでしょうか?。 確かに,これは各ポストに付く政治家の能力如何によるところも多いのでしょうが,政治家によるリーダーシップが発揮しにくい原因はその他にもあるといえます。 さて,ここで少し外国に目を向けてみたいと思います。 政治的任命(ポリティカルアポインティ)による人々がリーダーシップを発揮している国といえば,その最たる例はアメリカでしょう。 ただ,ここでは大統領制をとるアメリカではなく,日本と同じく議員内閣制をとるイギリスの状況を少し見てみます。 イギリスでは,政治家が内閣すなわち行政府の主たるポストに付き,リーダーシップを発揮しています。 なぜでしょうか?。 一つには,イギリスでは議会における第一党の党首が首相に選出され,その元で任命された各大臣(その他ポリティカルアポインティ)が任命されます。そして,任命された大臣は次の総選挙まで任期を全うするのが通常であり,内閣改造といった現象はまず見られません。 こうした状況の中で,各大臣等は比較的長い期間をその役職で過ごします。その結果,各政治家は専門性を身につけていきます。 ここでおもしろいのは,政権交代が起こり,野党が組閣する場合も,決して「素人」が入閣するわけではありません。 なぜならば,新たな与党(すなわちこれまでの野党)はシャドーキャビネット(影の内閣)を通じて,各専門分野において活動してきたからです。 イギリスにおいては,日本のシャドーキャビネットと異なり,その閣僚についても,公費が支給されます。つまり,イギリスでのシャドーキャビネットの閣僚はよりパブリックな存在として機能しています。 また,イギリスにおいては大半の与党の政治家が行政の公職につきます。 大臣,副大臣,政務秘書官といった役職があり,政治家として仕事をしようと思えば,なんらかの役職につかないと仕事がやりにくい状況になってしまうのです。 これに対し,日本の場合,大臣以外のポストといば政務次官であり,よく揶揄されるように「役所の盲腸」と呼ばれるなど,ほとんど実権を持たないものとなってしまっています。 日本で,なぜこうしたことが起こるのかといえば,これは与党すなわち自民党の各部会が大きな権限を持っているからです。 つまり,日本の制度では行政=役所と,政府与党=自民党という二つの政治的決定の場面があることを意味し,その責任の所在が曖昧になると同時に,調整に非常に時間がかかってしまいます。 こうした,政治的決定の二元化は,大臣をはじめとする政治的任命職のリーダーシップを発揮しにくい状況を作り出しているといえるでしょう。 とりわけ,このことは現在のような連立政権ではさらに複雑で,行政内,連立与党内,各政党内の意見調整を必要とし,ますますリーダーシップを発揮しにくくなっています。 ○内閣の運用 日本では,アメリカのような大統領制の方が政治のリーダーシップを発揮しやすいと考えられがちです。しかし,イギリスの例からすれば議員内閣制でも強力なリーダーシップは発揮することが可能です。 21世紀を迎え,新たな行政制度が来年からスタートします。 単なる「形」で終わらないように,その運用を期待してこれからも見守って行きたいと思います。 もちろん,その前提は政治家の質によるのでしょうが・・・ (松井)
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