96号 第1会議室 (2001/01/15)up down
   ● 2001年夏・参院選に思う
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 いよいよ参議院選挙が今年の夏に差し迫っております。
 今回は新しい選挙方式である非拘束名簿式選挙が導入されます。これが,どのように選挙結果に機能するのか?,さらには全国区とも比喩されるシステムは各選挙陣営にどういった変化をもたらすのか?,非常に注目されるところであります。


□非拘束名簿式比例代表選挙

 今回の参議院選挙では,先の選挙改革による非拘束名簿式比例代表制が導入されます。非常に長ったらしい名前のシステムですが,以前に採用されていた拘束名簿式とどのように違うのか簡単に説明しておきましょう。

 そもそも,導入の発端となったのは,昨年自民党議員が「比例区順位を上げるためには,多額の金が必要だった」と利益供与を受けていたとされる事件です。
 その後,こういった事件を防止するために,特定の人間が比例順位を決める拘束名簿式を廃止し,有権者の投票により比例順位を決める非拘束名簿式を取り入れたというわけです。

 この非拘束名簿式になると,実際の選挙では,どのように結果が出されるのでしょうか?。手順を説明しましょう。
 有権者であるみなさんは,従来の拘束名簿式であれば,「政党の名前」を書いて投票していました。今回の非拘束名簿式では,「候補者の名前」か「政党の名前」を投票用紙に書いて,投票します。
 この得票数を集計した結果から,政党の獲得議席数は,その政党の「候補者の名前」と「政党の名前」をあわせた票数で決まります。そして,従来では政党が決めていた順位は,「候補者の名前」の得票数の多い方から,1位,2位と決まります。

 なるほど,これなら候補者の当選順位決定は,有権者が決めるのですし,前述のような事件は起こらないでしょう。しかし,このシステム,問題もはらんでいます。

 いわゆる「全国区復活」と称される問題ですが,この非拘束名簿式では,選挙区選挙,衆議院の比例代表制のように,地区制限がないため,候補者個人の当選順位を上げるためには,全国的に知名度をあげる必要があります。そのために,選挙陣営には莫大な資金が必要ですし,候補者には死ねといわんばかりに遊説日程が待っています。
 以前の全国区時代には,このために過労で選挙期間中に亡くなる候補者が出るなどしたために,廃止となったわけですが,今回同じような状況が再現されるかも,というわけです。

 ただ,おそらくそれを避けようと,政党は全国的に知名度のあるタレントなどの有名人を,候補者として擁立するでしょうし,現に某イベントで某政党幹部が某マラソン監督に「出馬して」というニュアンスのことを言ったところ,あっさり否定されたという話もあります。
 候補者がタレントばかりになることはないでしょうが,おそらく得票順位は某公共放送のタレント好感度のようになるのでは?,と考えてしまいます。

 では普通の候補者は,黙って指をくわえて見ているのかというと,そうでもないでしょう。普通に考えれば,人口密集地に行き,少ない移動時間で多くの個人票を獲得する,という戦略を採ることになるでしょう。つまり,大都市の有権者ばかりが重要視され,地方部は置いてけぼり,とも考えられるわけです。地方自治が進んでいるならともかく,これがいいのかどうか,いずれ考え直す必要があるでしょう。

 また,非拘束名簿式は比例区候補者の尻をたたくためのシステムともいわれます。
 というのも,従来の比例代表制のもとでは,いったん当選順位が決まってしまうと,あとは政党の得票数如何によるため,もはや比例区の候補者その他支援団体は,大々的に選挙運動を展開する意義もなくなってしまいます。すると「手抜き」が起こるため,せっかく政党宣伝のよい機会である選挙期間をむだにされてしまうので,選挙期間中にも比例区の候補者には,しっかり働いていただこうというわけです。

 とはいえ,このような政党事情で選挙システムが変わるというのでは,このシステムも今回限りで,またころころ制度が変わってしまう,なんてことになりそうな気がします。
 これでは,汚職と並ぶ別の問題,「国民の政治離れ」がまた進行しそうですね。ところで,昨今の選挙制度改革はこの視点が抜けてると思うのですが,いつになったら国会では着手するのでしょうかね?。


□選挙結果でなにが変わる?

 結果については,昨今の内閣支持率を見る限り,このまま行けばまあ…あえて書かないことにしましょう。

 ということで,今回の選挙,なにやら衆参同日選挙という噂もあるようですが,これは前回のときも噂としては出ているようで,某党の立場が弱くなると必ず出てくる話のようです。とはいえ,勝てる可能性のある反面,全政党へかなりのダメージを残すのも事実で,なかなか踏み切りにくいのでしょう。
 ただし,可能性は残っているので,警戒だけは怠らないようにしておいた方がよろしいでしょう。

 さて,議席数についてですが,与党が現体制を維持するためには,改選数126のうち,65議席をとることが必要です。これは一見,簡単なようですが,自民党の前回結果は44議席。この状況をベースに考えれば,野党が与野党逆転を言うのも非現実的ではなくなってきます。
 ということを考えると,現状のペースのままで参議院選挙を越えると,政局は劇的に変貌する可能性があります。

 しかし,筆者の私感として,さてそんなに変わるのかな?,とも考えています。というのは,参議院が野党優勢であっても,やはり与党は変わりませんし,結局当選する人間がほとんど変わっていないのであれば,与野党の攻防といっても相も変わらず政局勝負というかメンツ争いでしょうし,政策を作るのは官僚であるという構造が変わりません。

 確かに政治の透明度が増すとは思われますが,政党と政治家が成長することがない限り,この先も,あいかわらず政治不信が続くのではないかと思います。まあ,おそらく政治の永遠の課題だとは思いますが。



中沢


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