第104号 第1会議室 | (2001/03/12)![]() ![]() |
● NPOに見る寄付金の集め方 ● |
政治団体とNPO,似て異なる存在ですが,財政,経営,成果といった面から考えてみると,その活動は意外と多くの共通点があるものです。多額の資金が必要なわりには,自己資金を捻出することはむずかしく,実際に活動してくれる人間は金銭的報酬は出せない上に,その心理的成果も数字のような具体的な形として示すことが難しいといった問題を双方とも抱えています。 そのような点を考えると,政治団体がNPOから学ぶべき点は数多くあるように思われます。そのうち,今回は運営資金という面から考えてみることにしましょう。 □いかにして寄付を集めるか あなたに寄付をしてくれる人はどのような人でしょうか?。いきなりやってきて,何も言わずにお金をポンと置いて帰るような人でしょうか?。 普通,そんな人はいないでしょう。あなたの活動に何らかの関心を持っているから,寄付をくれるわけで,あなたのイベントに参加したり,あなたの活動状況を聞いてくるはずです。 これを逆に見た場合,あなたの活動への関心の深さが,寄付をくれる可能性,金額の大きさと関連してくるということは認識しているでしょうか?。 資金面について健全なNPOは,様々な人々から興味・関心を引く活動に長けています。 例えば,自分たちがどのような組織で,どのような目標を持ち,どのような活動を行っているかを寄付者,あるいは寄付してくれそうな人々に伝えるのがうまい,ということがあげられます。ということは,その前提として,その組織がかなり明確な目標と明確な使命をもちあわせていなければなりません。 例えば,ユニセフのような機関であれば,その使命は「子供を最優先とした途上国支援」といったものですし,さらに,それらに基づいて「2005年までに全世界からのポリオの根絶」といった目標が出てきます。 政治家で考えれば,選挙区内のゴミ問題の解決を主張するのなら,3年以内にゴミの埋め立て量を半減させる,といった目標を掲げてもらいたいものです。何も主張することが無い政治家はいないとは思いますが。 次のポイントとして ●あとは購読者のみのお楽しみ●
人に伝えることです。 このように,寄付をもらうことでの実効性を示すことは,相手の興味・関心を引くためには重要なことです。 ただ単に「これこれで困ってるからお金ください」と言って活動する政治団体やNPOも実際にあります。確かに,困ってはいるのでしょうが,どちらかというと,金集めが目的なのが裏側に見えるので,この主張ばかりでは,あまり周囲の人々に好感は与えないでしょう。 最後に重要なこととして,寄付者はボランティアとして活動してくれる可能性のある人々だという考えを持つことです。寄付者になってもらうということは,活動に参加する機会を与え,ひいては組織の使命達成に関心を持ってもらう存在になってもらうことへとつながります。 これは,政治家で言えば,当たり前のことで,支持者を集める活動を手伝ってもらえる存在へとつながることになることですね。ただし,この意識が足りないままに寄付者を放置している政治家の方は,きちんと支持者の中での寄付者の位置づけについて考え直すべきでしょう。 このように,寄付者を開拓することは,寄付をしてもらえるように啓発し,どうすれば組織を助けてもらえるかというところまで関心を高めてもらい,その成果が還元されるべき存在となる,ということなのです。 □寄付金集めの戦略 NPOでも政治家でも,マーケティングという言葉を意識しない人の方が多いと思います。当然,企業のように物やサービスを売るわけではありませんから,これを広報宣伝という風に考えれば意識しなくてもいいことのように思いますが,市場調査という意味においては,寄付金集めの戦略立案には必要不可欠となってきます。 まず,誰を対象にアプローチしていくかと言うことを考えなければなりません。 主張する内容によっては,寄付を集めやすい政治家も,集めにくい政治家があるかもしれません。が,いずれにせよ,支持者集めの基本として,誰に活動を理解してもらうかを充分に考えることは必要なことですし,それがツボにはまればNPOとしても政治家としても成功の道が待っています。 同様に寄付集めのためには,優良なNPOは,多様な寄付階層にたいして,それぞれ別の訴える内容を持ち合わせています。 規模にもよりますが,全国クラスのNPOともなると,寄付を集めようとする相手によって,年齢,収入,居住地域などによって分類した50近くの訴える内容のパターンを用意しているところもあります。 普通の政治家のみなさんは,これほど細かくパターン分けをする必要はないと思いますが,誰に当たってもオウムのように同じ主張の繰り返しでは,多くの人から興味関心を引く可能性も低くなってしまいます。 このように,マーケットの調査を丁寧におこなうことに加えて, ●あとは購読者のみのお楽しみ●
寄付者の寄付能力の最大限を拠出してもらえるようにしていきます。 また,この寄付金集めをするボランティアの人たちにために,マーケットの調査で可能な限り,寄付者,あるいは寄付してくれそうな人に関する情報を提供するのと同時に,これらのボランティアを優秀なスポークスマンにしなければなりません。 寄付を集めたり,そのフォローをしたりと,人々の面前に出ていくことは,潜在的な寄付者を教育する機会であり,啓蒙の機会でもあるのです。この際に,ただ単に「○で困っている」と訴えるだけでは,質問を受けたときは答えることはできませんし,さらに寄付を得ることも難しいでしょう。 せっかく得たチャンスをみすみす逃さないためにも,「他人をいかに口説くか」だけでなく「いかに口説かせるか」ということも考えておきましょう。 このように,NPOでの寄付集めというということを見てみると,ただ単に資金集めという性格だけでなく,活動の参加者集め,一般の人々への教育・啓蒙といった性格も持ち合わせていることがわかると思います。 以上すべてはNPOについての話であり,政治活動においても当てはまるかどうかはわかりません。確かにNPOへの寄付金の税額控除は無く,政治団体への寄付金は条件付きであるといった違いはありますが,応用できる部分は多々あるはずです。 いつも資金難で頭を抱えている方や,支持者層の伸び悩みで困っている方々は,一度こういった形態の組織についても参考にしてみると,いいことがあるかもしれませんよ。 (中沢)
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