107号 第1会議室 (2001/04/02)up down
   ● 国のための政策と選挙に勝つための政策
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 今年7月に行なわれる参議院選挙へ向け,皆さんの家のポストに,名前や政策の書いたビラが入り始めているのではないかと思います(ただし,それが参院選を意識してのことだとわかるのは関係者だけで,一般の方々はなぜこの時期にそんなビラが入るのかわからないかと思いますが・・)。

 今週は,そのビラなどに書いてある政策を特集します。候補者が本当にやりたいことを,選挙の際に訴えているのか,それともとりあえず選挙の時は実現しそうになくても有権者の耳障りの良いことを言っているのかを調べてみました。


○選挙公約

 以下は,9年前の参議院選挙の際の公約をいくつか拾ったものです。

・小人数学級の実現と人権を尊重し,親切な心を育む教育を行ないます。
・国民の声が直接政治に反映されるよう,国民の手で首相を選びます。
・多くの国民が参加できるようNPO組織の育成につとめます。
・省庁半減を契機に,効率的でムダのない行政システムに改革します。
・税金の使い道を厳しくチェックし,赤字財政を削減していきます。

 もう1度言いますが,これは9年前の選挙の時の公約です。どれをとっても今の公約としても使えそうではないでしょうか?。公約が今現在もまだ変わっていないということは,つまりまだ公約は果たされていないということになります。
 では,9年前のこの候補者は,公約違反を犯しているのか?と言うと,そうではありません。なぜならば,これらの公約には期限や具体的な数字が出ていないため,現在取り組み中ですと答えれば,それは間違いとは言い切れないのです。


○ある日の事務所での議論
 参院選へ向け活動を始めた候補者事務所の,政策の刷り合わせをするための事務局会議で行なわれた議論です。


スタッフ 「どのようにしたら日本の赤字は減るのか(財政再建策)を政策に入れたら良いという意見が多いのですが」

候補者 「僕もそうしたいんだけど,実際に今から赤字をなくすことを実現するのはかなり難しいよ。今の日本の赤字は666兆円。もう手遅れかもしれない」

スタッフ 「なぜ?無駄な公共事業など,予算をスリム化していけば,赤字解消は可能ではないですか?」

候補者 「データを見たらわかるよ。(平成13年度の予算書を見せて)今年度の歳出総額は,約82兆6千億円。これの20%に当たる17兆1千億円は国債費に使われている。つまり,予算の5分の1は借金返済に充てているということだ。そして,公共事業についている予算は9兆4千億円。仮に公共事業を完全にストップさせたとしても666兆円分の9兆円でしかない。もちろん,無駄な分をカットして社会保障費に回すという面においては重要だが,赤字解消という面から言えば,これでは焼け石に水だよ。」

スタッフ 「では,もうこのまま借金を減らすことが出来ずに,日本の総資産1300兆を借金が超えてしまうのを待つだけなのですか?」

候補者 「政治家になろうとする人間としてもちろん何らかの対策を取らなければならない。しかし本気で借金をなくそうとすれば考えられる手段はただ一つ,増税しかない」

スタッフ 「この選挙でそのことを訴えていきますか?」

候補者 「さすがにそれはつらいだろう。失業者も過去最悪というこの時期に,増税しましょうと言うのは。」

スタッフ 「確かに有権者からしてみれば,国が勝手に借金しておいて,その尻拭いは国民みんなでしましょうというのは,どう考えても納得いかないでしょうね。」

候補者 「日本の将来を考えた場合には増税,選挙を考えた場合には逆に減税。どうしたらいいんだろうな。」

スタッフ 「受かるためには何をしても許されるという訳ではないと思いますが,反面,候補者は受からなければただの人。当選して初めて自分のやりたいことが出来るとも良く言われますよね。」

候補者 「これまでの候補者の多くは,言うならば選挙のための,有権者にとって耳障りの良い公約を掲げてきた。しかし,これだけ借金が膨らみ,景気が上がらない今,真実を伝えることが最も重要ではないだろうか。たとえそれが,短期的に見たとき,有権者の新たな負担を強いることになったとしても,現在日本は危機的状況にあるということを伝えていくべきではないだろうか。そのことを選挙を通して国民に知ってもらうために訴えていくことは,やはり票を減らす結果になってしまうのかな。」

 結局この日は結論は出ませんでした。
 今回登場した候補者は,候補者が本当にやりたいこと,やらなければならないことを訴えながら選挙に勝つという,一見当たり前のようなことが,実は非常に難しいことをつくづく感じたようです。


 有権者としても,いい加減に,実現可能性が低くて,耳障りの良いことは聞き飽きてきているはずです。
 しかし,法案を決めるのは議員ですので,昨年の衆院選の直前に,介護保険施工後半年間は65歳以上は保険料免除という法案が通ったように,選挙目当てと思われる法案が通ってしまっている現実があります。

 最後は,有権者の良識を問うということしかできません。将来のことを考えず,目先の利益をえさにして耳障りの良いことを言う議員を判断できるのは有権者だけです。
 本当に日本のことを考えている人間は,もしかしたら有権者に更なる負担を求めているかもしれません。
「こいつ,我々の苦しい生活状況も知らないくせに!」
と思う前に,一度じっくりその人の話に耳を傾けてみる価値はあるのではないでしょうか?(注:もちろん本当に国民の生活感とは大きくかけ離れた議員,候補者もたくさんいますが)
 いずれにしろ,最終的な判断を下すのは有権者です。

緒方


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