127号 第1会議室 (2001/08/20)up down
   ● 公共事業ってどこまで必要?
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□高速道路建設に見る現実

 先日、「○○高速道路早期実現を求める会」という会合に出席する機会がありました。
 その会合には、地域選出の国会議員、関係市町村の首長、行政関係者、関係地域団体の代表(自治連合会の会長さん等々)が出席していました。

 会合の内容は、地域代表からの現状説明、陳情、現在の取組状況の説明といったもの。当然,会合の名前の通り、最後に「○○高速道路の早期実現を求める決議文」の採択といったものでした。

 確かに,高速道路一本を引くことによって,その地域は,交通の利便性は増し,大病院やアミューズメント施設といった,都市部の施設が利用できるようになります。経済的にも,観光などの新規産業が開拓され,都市部と人的にも物流的にも交流がおこり,さらに建設工事の予算投下により経済は活性化します。
 これらの利益に対して,地元の関係者が,いかにこの○○高速道路を切望しているのか、ヒシヒシと伝わってきました。


 一方,同じ○○高速道路には,諫早湾,長野県のダム,といった問題同様,○○高速道路の建設反対派,というのも存在します。

 彼らの主張は,大体の予想はつくと思いますが,「国民の血税を無駄な公共事業に垂れ流すな!」といった感じです。税金の無駄使いの後には,財政圧迫,環境破壊,騒音公害と,彼らの主張が続きます。

 なるほど,現在完成している有料道路の大半が,予定通行量に達しない採算割れであったり,有料道路をつくってもメンテナンス等で費用がかさむばかりであったり,交通量が予想通りであったとしても近隣住民の苦情対応でてんてこ舞いだったり,と運営に失敗している例は数限りなくあります。

 当然,政治関係者としては,こういった声や現実が存在することも見逃してはならないでしょう。

 さて,読者のみなさんは,どちらを支持されるでしょうか?。最近の風潮では,建設反対支持の方が多いでしょうか。読者のみなさんが,道路建設の直接の受益者でないというもあるかもしれません。


□同じ道路の公共事業でも

 この受益者という観点から,少し公共事業を見直してみましょう。
 あなたの家の地域で,大きな地震がやってきたとしましょう。自分の家は…,まあ無事だったことにしておきますが,自分の家の周辺の道路だけが,たまたま古かったのか,地盤が陥没して,自転車だってまっすぐ進めない状態になったとしましょう(阪神大震災などが思い当たりますが)。

 さて,この道路は直すべきか?。
 当然,直すべきでしょう。だって,自分の家の前の道路ですから(笑)。ところが,これもある種の公共事業だったりします。地元の建設産業が潤い,地元住民が利益を得る,基本的構造は○○高速道路と変わりません。

 このレベルでは公共事業とは考えないかもしれませんね。
 では,古くなったボコボコの道路が近所にありませんか?。車で通ると非常に乗り心地が悪い,歩いて通ると足の裏がちょうど入るぐらいの穴があったりする感じの道路です。
 なければ,それで幸せだと思いますが,そんな道路があったら直して欲しいですよねぇ。でも,それも公共事業。道路を直して欲しい,と市役所に電話すれば,あなたも「○○高速道路早期実現を求める会」と同じ仲間ということです。

 同じような公共事業でも,自分の家の前の道路は賛成なのに,他人の高速道路は反対する。このような矛盾ができてしまうのは,今の公共事業の善悪の基準が,道路事業とか治水事業といった部分には無いからだったりします。


□公共事業のよしあし

 では,どこに善悪の基準があるのかを考える前に,歴史の復習。
 アメリカのニューディール政策(忘れた人は歴史の教科書を引っぱり出して下さい)は,フランクリン・ルーズベルト大統領が提案して,アメリカを大恐慌から立て直したということで,有名な政策です。これは,ダム建設,道路建設といった社会基盤整備に,多額の国家予算をつぎ込み,雇用の安定と基盤整備による経済発展を成し遂げた,というものです。

 これは,どこかの国でも,”今も”同じことをやっていますね。でも,アメリカのニューディール政策は,良い公共事業の一例として,歴史的に評価されています。

 ところが,今の日本の公共事業は,ニューディール政策の時代と違って,政策予算が国内市場に対して,ごくわずかな影響力しか発揮できませんし,株式市場などを見ればわかるように国際市場を相手にしなければ,景気を浮揚させることはできません。このように,もはや公共事業は,景気対策としては役に立たない状況になっています。


 ところで,ポイントは,この景気対策というところにあるのではないかと思います。
 どうも,特定の公共事業の賛成論者の方々は,景気が良くなる,経済が活性化する,といった部分を強調されるようですが,本来,公共事業を行う理由の「景気対策」ではなく,「社会基盤整備」にあるはずではないでしょうか?


 このあたりが,「公共事業が無駄」として批判される風潮を読んでいるのだろうと思いますが,景気対策として行ったはずの公共事業のおかげで,逆に財政を悪化させている,しかも好転する見込みがない,というのでは,確かに目的は達成できていない「無駄に終わる」公共事業となってしまいます。

 公共事業が社会基盤整備を目的とされるのであれば,すでに基盤が整備されている地域で,さらに公共事業を行う必要はないですし,住民の利便性が上がらない,ましてや住民が使わないような設備に投資をする必要もありません。

 昨今の公共事業批判も,この基本的な目的が失われたところから生じているのではないでしょうか?。一度,この基本に立ち返って,公共事業の必要・不必要といった基準を見定めることが,今後の公共事業のポイントになるのではないかと思います。

松井


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