139号 第1会議室 (2001/11/12)up down
   ● 選挙制度改革を考える
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□また選挙制度改革ですか?

 今日現在は収束気味のようですが,つい先日まで国会の一部をにぎわせていた話があります。
 というのは「選挙制度改革」の話。

 選挙制度と言えば,この5年ぐらいで,参議院選挙は「拘束式比例代表制」が「非拘束式比例代表制」に変わり,衆議院選挙は「中選挙区制」が「小選挙区比例代表並立制」に変わっています。
 で,最近の話題は,衆議院選挙にまた「中選挙区」を復活しようという話があがったことです。

 ということで,今回は世間をにぎわした選挙制度改革に,スポットを当ててみることにしましょう。


□報道からみる話の経過

 騒ぎの発端はごく最近のことで,10月24日,自民・公明・保守の与党3党によって,一部中選挙区制を復活させる内容を盛り込んだ衆議院の選挙制度改正案がまとめられたことにさかのぼります。
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1.定数2の選挙区を12区つくる(東京都の5区,さいたま市など)
2.千葉5,6,7区(市川,松戸)と神奈川8,9,10区(川崎)をそれぞれ合区(定数3)
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 ところが,この改正案に対しては,「野党」に加えて「自民党議員」から,変更される地区選出議員を中心に,猛然と反対の声がおこりました。
 その理由のひとつは,合併する選挙区それぞれで当選してきた自民党議員がいるのに,合併した場合,共倒れの可能性が高くなりますし,かといって公認候補を1名に絞る調整は現実にかなり難しいからです。

 その猛反発の結果,31日夜の3与党党首会談で,衆院選挙制度改正については,
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1.今後1年以内に抜本的な制度改革案を検討する。
2.改革案は,政府の審議会が出す区割り見直し案と一体で処理する。
3.これまでの各党案は撤回するが,中選挙区制も検討対象として直ちに与党協議を再開する。
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 と,いったん先送りされることになりました。


□意義はどこにいったのやら

 見つからないだけかもしれませんが,ここ最近の新聞などいろいろな情報を探してみても,今この時期に選挙制度を改革することの「建前」や「大義名分」や改善する点は,どこにもみつけることができません。
 通常であれば,「死票の問題」とか,「1票の格差を考えた選挙区割」とか,「金のかかり方」が話題の中心になるものです。

 では,今回,中選挙区制を一部に復活させる「大義名分」は何なのでしょうか?。

 これがさっぱり見あたらない。
 こうした疑問に対する明確な説明もないままに,しかも,テロ対策関連法案の審議と補正予算が審議入りする間隙に隠れて,与党3党は選挙制度を変えようと試みたようです。
 実際,今回の実務協議をやった議員(自民党)が「川崎市を3人区にする理由?。特にないなぁ」とか,「公明党との連立をどう維持するかという観点から,苦渋の決断をした」と話してるくらいなのです。

 今回の選挙制度改革,本当に必要性があるのでしょうか?。


□わたしの見解

 確かに小選挙区制にしろ中選挙区制にしろ比例代表制にしろそれぞれ長所・短所があります。どの選挙制度を取り入れようとしても,死票の問題があったり,選挙区割が私利私欲だといわれたり,一長一短で様々な問題が考えられると思います。
 問題のない選挙方法など存在しないといっても,過言ではないのではないでしょうか?。それほどまでに,選挙制度を変更するというのは大変なことだと思います。

 しかし,民意や裁判所の判決などが現行の選挙制度がかけ離れている場合には,見直す必要も生まれることはあると思います。例えば,現行の衆議院議員選挙でとられている小選挙区と比例区の重複立候補による復活当選の問題や,一票の格差の問題など,見直す必要はあるのかもしれません。


 ただし現時点に限っては,私は,衆議院の小選挙区比例代表並立制を,見直すべきではないと思っています。
 考えるに,選挙制度に関して非常に大事なこととして「わかりやすく,その制度が有権者に周知徹底されている」ということがあげられると思います。選ぶ人間がわからないルールで,国を動かす人間を選べというのも一般市民には酷な話です。

 このわかりやすさの点に関していえば,衆議院の現行制度は,

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(1)「選挙区では最大得票のものが当選する」という小選挙区制のわかりやすさ
(2)小選挙区制では死票が多く,少数意見が切り捨てやすいという批判に対しては,比例代表制との並立によって解消される
(3)有権者にとって,小選挙区で「候補者個人」に比例代表で「政党」に投票するというのは,決して複雑すぎる投票システムではない
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 以上の理由から,非常にバランスのとれたわかりやすい選挙制度だと私は思っています。


 そもそも,現行制度のもとでは,まだ2回しか選挙が施行されていません。そんな段階で,選挙制度を変更することには反対です。まして今回のように,「何を改善するために選挙制度を改革するか」を明確にせずに,変更することは明らかにおかしい。

 ただ単に,目的なく改革をとなえても,問題が選挙制度だけあって「自分の選挙のため」だとか「私利私欲」だとか「党利党略」だとか言われかねません。

 そう言われないためにも,選挙制度改革の議論は,国民にもっとわかりやすく,説明をしながら,議論をすすめなければならないのではないでしょうか?。
 もともと,選ばれる人間が選挙制度を決めるといういかがわしい話。それを情報公開しないのは,どうしても党利党略だと言われかねないでしょう。

 選挙制度については,読者の皆さんも様々な意見をお持ちのことだと思います。是非是非,皆さんのご意見をお聞かせください。
 お待ちしております。

 matsui@officespc.com まで

松井


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