152号 第1会議室 (2002/02/18)up down
   ● 政治家事務所のISO9001(その2)
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 前回は,ISO9000シリーズが国際的な統一規格であることを述べましたが,今回は,実際に認証を取得することで,一体どのようなメリットがあるのか,政治家事務所にはどのように導入できるのかということについて触れてみましょう。

□ISOのメリットとデメリット

 通常の企業がISO9000シリーズを取得しようとする目的はなんでしょう?。会社の中の管理業務をきちんとおこなうためでしょうか?。

 実際,この件に関しては,大抵のどの企業も「生き残るため」というコメントを出しています。
 というのも,最近はこの規格がなければ,まるで信用の無い企業のごとく扱われる場合が出てきたからです。同業他社が,次から次へとISO9000シリーズを取得していく現状では,認証を受けた/受けてないといった線で,すっぱりと企業の善し悪しを見られてしまうからです。
 さらに,状況が進んでいる建設業界などは,工事の発注を受ける条件として,会社がISO9001を取得していることが求められる場合もあります。仕事が来なければ,まさしく「生き残れない」のです。


 では,いざ取得したとして,どのような効果があるのでしょうか?。
 大まかに,対内的な効果と対外的な効果とわけられます。

 対内的には,いわゆる体質の改善,構造の改革,そしてご存じの品質の向上があげられます。
 少し具体的な話をすると,たとえば,経営者や管理者には明確な責任が課せられます。「てっきり君がやってくれるものだと…」というコメントは通用しません(身に覚えのある政治関係者は多いのでは?)。管理責任内の業務を間違えればクビとまでは規定していませんが,結果が見える分,管理能力のある・なしがはっきりわかってしまいます。

 その他,通常の一通りの業務手順から,一度決めたことを変更する際の手順,不具合が発生した際にどのように直すかの手順と,製品やサービスを生み出すまでにかかる工程がはっきりと明確化します。


 もう一つ,対外的な効果としては,やはり信用があがることが大きいでしょう。
 第三者が客観的に認証したことを,周囲に標榜できるというメリットは,政治家にはないはずです。
 今どき,どこぞの団体の役員や大臣になっても,やれ「裏で金を回した」だの,「当選回数の順送り」だのと,まるで本人の実力が全く無いかのごとく(ありますよねぇ)言われてしまう政治不信の世の中ですが,シビアな国際的規格の認証となれば,周りの人間も認めざるを得ません。

 また,イメージの問題ばかりではなく,実質的な顧客=有権者との応対に関しても,ここ最近は沈静化しましたが,「言った言わない」の行き違いが減るというメリットを出すこともできます。
 ISO9001では,商品やサービスなどを,どのような内容・レベルで提供するかという契約を,文書として残すことが求められます。これらの契約の変更の手順もきちんと決めなければなりません。要するに,口約束は約束してないのと同じ扱いなのです。
 提供する側も,提供される側も,双方納得して物事を進めることができ,互いの信頼関係も深めることができます。


 しかし,このようにメリットばかりとは限りません。もちろん,デメリットもあります。誤解の無いように,きちんと述べておきましょう。

 まず,お気づきだと思いますが,認証に手間がかかるというのが,デメリットの1つです。認証を受けるために,業務手順のほとんど全てを変更する必要が出てきますし,そのための審査には,事業規模によりますが,100万円〜数千万円の費用が必要になります。

 もう1つのデメリットは,管理用の記録・資料が山の様に溜まってしまうことです。この問題は,ほとんどの場合,コンピュータを利用した電子媒体へと切り替えることで解決しますが,いずれの場合にしても,業務管理のための資料の管理という「何もなければ必要のない仕事」が1つ増えることになります。


□政治家の事務所だったらどうなる?

 このISO9001を政治家の事務所にいざ適用するとすれば,どのような感じになるか。考えてみましょう。

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 たとえば,選挙期間中の話。
 AさんはB候補の熱烈支持者。そんなAさん,どこから聞きつけたのか,こんどの○月○日の街宣車のルートに自分の住んでいる町内だと聞きつけます。そこで,B候補の配下のC秘書に「家族つれて応援するから,是非うちの前をルートに入れてね」と頼みます。もちろん,C秘書は2つ返事でOKして,街宣車担当とB候補に口頭でその旨を伝えます。

 さて,いざ当日。その日の街宣車の乗員は,運転手にB候補,さらにゲストスピーカーとして「地元に強い」D議員が同乗しておりました。
 一方Aさんの方はというと,車が待てど暮らせどやって来ないとやきもき。しかし,しばらくしてから耳を澄ませば,遠くの方からB候補の名前を呼ぶ街宣車の声が聞こえるではありませんか。やっと来たかと,期待に胸を膨らます。

 ところが,車中ではそんな状況も知らず,D議員が「よし,そこ右」と指示を出す。せっかく近づいてはいるのですが,D議員が「地元に強い」ということなので,運転手もB候補もそのまま従います。こうして車はAさんの家を避ける様に,段々と別の所へ。

 かくして,喜んだのもつかの間,その声はだんだん遠ざかっていってしまうのでした。こうして忘れ去られたAさんは,支持者ではなくなってしまったのでした。

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 こんな話,現実にありませんか?。

 どこが問題なのか?。
 はっきりしているのは,Aさんの要望が実現されていないことでしょう。もう少し具体的に見ると,Aさんの要望が,結果的に街宣車の運行にきちんと組み込まれなかったことが,問題点なのです。
 このような状況た対応するために,ISO9001では,計画から最終的な検査確認までの業務手順を,きちんとマニュアル化し,その手順の通りに業務を進行しなければなりません。さらに,顧客の要望は文書として記録して,内部のしかるべき部門にしかるべき方法で通達することになっているので,「口約束して後で忘れた」ということは防ぐことができます。


 しかし,この話でのもっと大きな問題は,D議員が街宣車のルートを変更してしまったことです。これには,細かく見ると,2つの問題が隠されています。1つは変更する手順の問題,もう1つはルートを監督する責任者が誰かという問題です。

 変更手順の問題ですが,本来,必要なルート変更であれば,事前にある程度は把握することができるはずです。つまり,事前にD議員にルートを提示して指示を仰いでおけば,その場の行き当たりばったりのルートとはならなかったはずですし,Aさんにルート調整が難しいことを伝えることもできたはずです。
 また,緊急のルート変更であっても,当然,街宣車の運行部門や候補者の日程管理部門の確認または了承を取らなければ,この後の予定が突然狂い出すわけで,気軽に変えられるものではないはずです。

 また,もう1つのルートの監督責任者の問題ですが,あきらかにD議員ではないでしょう。この場合は,D議員の意見を採り入れて,ルートを組み直し,それを承認する立場の人が必要です。

 これらをISO9001に照らすと,このあたりの変更手順も定めることになります。まず,通常の手順であれば,運行部門・日程部門との調整,それからB候補,D議員との調整を加えて,変更が必要ならその理由を添えて,Aさんに報告することになります。緊急の場合は,現場の責任者を運転手・またはB候補として,責任者に全ての日程とルート,その通行理由を把握しておいてもらいます。このようにすれば,多少のムラが出ても,本当に必要なポイントを押さえて,きちんとした運行をしてくれることが期待できます。


 最後に,この例のような事態が起きても,それをフォローする仕組みもISO9001では求められます。是正措置というように呼ばれますが,間違いが起きたら,きちんと直す手順も定めておくのです。
 この場合であれば,1日の終わりに運転手かB候補本人かが,その日に通ったルートをきちんと確認し,もしも抜けてしまった場所があったら,後日にそこを再度ルートとして加える,といったような仕組みです。これであれば,Aさんも多少の不満は残っても,支持しなくなってしまうということは,無かったはずです。


□認証取得の近道?

 軽く実例を交えながら紹介をしましたが,ここまで読んできて,「このISO9001を取得するのは面倒くさそうだ」と思われる方もおられるのではないでしょうか?。でも,食って寝るダイエットではないですが,何もせずに品質の向上などのメリットがあるはずもありません。
 しかし,認証を取得するためには,若干の近道もあります。ISOコンサルタントの存在です。

 ということで,次回は,コンサルタントのことと併せて,導入までの手順と道のりを紹介いたします。


鷲津


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