155号 第1会議室 (2002/03/11)up down
   ● 政治家事務所のISO9001(その3)
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 全3回シリーズでお話ししてきました「政治家事務所のISO9001」も今回がその3回目。編集部内でも「お門違い」や「的はずれ」,「特集として成立するのか」などと言われ続けたテーマですが,政治家事務所にISO9001を導入するという情報公開や第三者による認証というおよそ政治家事務所に似つかわしくないテーマを論じることで,なにかしらの知識や変わった角度からのアプローチができればと思っております。最後までどうぞお付き合い頂ければと思います。

□前回までのおさらい

 ISO9001という品質の国際規格が何なのか,ISO9001というのはどのような条項でできているのか,実際に事務所に適用した場合にはどのようなことになるのかなど,前回・前々回とお話ししてきました。以下に簡単にまとめてみます。

◆ISO9001:2000年バージョンの必要とされる項目

4 品質マネジメントシステム
 4.1 一般要求事項
 4.2 文書化に関する要求事項
 4.2.1 一般
 4.2.2 品質マニュアル
 4.2.3 文書管理
 4.2.4 記録の管理

5 経営者の責任
 5.1 経営者のコミットメント
 5.2 顧客重視
 5.3 品質方針
 5.4 計画
 5.4.1 品質目標
 5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
 5.5 責任,権限及びコミュニケーション
 5.5.1 責任及び権限
 5.5.2 管理責任者
 5.5.3 内部コミュニケーション
 5.6 マネジメントレビュー
 5.6.1 一般
 5.6.2 マネジメントレビューへのインプット
 5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

6 資源の運用管理
 6.1 資源の提供
 6.2 人的資源
 6.2.1 一般
 6.2.2 力量,認識及び教育・訓練
 6.3 インフラストラクチャー
 6.4 作業環境

7 製品実現
 7.1 製品実現の計画
 7.2 顧客関連のプロセス
 7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化
 7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
 7.2.3 顧客とのコミュニケーション
 7.3 設計・開発
 7.3.1 設計・開発の計画
 7.3.2 設計・開発へのインプット
 7.3.3 設計・開発からのアウトプット
 7.3.4 設計・開発のレビュー
 7.3.5 設計・開発の検証
 7.3.6 設計・開発の妥当性確認
 7.3.7 設計・開発の変更管理
 7.4 購買
 7.4.1 購買プロセス
 7.4.2 購買情報
 7.4.3 購買製品の検証
 7.5 製品及びサービス提供
 7.5.1 製品及びサービス提供の管理
 7.5.2 製品及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認
 7.5.3 識別及びトレーサビリティ
 7.5.4 顧客の所有物
 7.5.5 製品の保存
 7.6 監視機器及び測定機器の管理

8 測定,分析及び改善
 8.1 一般
 8.2 監視及び測定
 8.2.1 顧客満足
 8.2.2 内部監査
 8.2.3 プロセスの監視及び測定
 8.2.4 製品の監視及び測定
 8.3 不適合製品の管理
 8.4 データの分析
 8.5 改善
 8.5.1 継続的改善
 8.5.2 是正処置
 8.5.3 予防処置

 ISO9001の認証取得とは,上記の条文に従って構築したマネジメントシステムが,決められたルールに従って,きちんと会社で運用されているかどうかを第三者に審査され(専門の審査登録機関によって審査),そして合格(認証)を出されることです。

 ISO9001を導入するメリットは,ルールかできていなかったようなところにルールを作成することで,事務所内や社内での意志疎通を円滑にし,また失敗した場合には是正処置と呼ばれる是正をおこなうことで,継続的に改善を行っていくことがあげられます。

□ISOコンサルタントって?

 通常のコンサルタントといえば,なにか問題があってそれを解決する,という人のことを指すものですが,ISOのコンサルタントは若干色合いが違う部分を持っています。簡単に例えれば,受験のために雇う家庭教師のようなもので,通常の経営改善の他に,認証取得のための体制作りについての業務もこなします。
 また,ISO9001の認証は,1年ごとに定期審査が入り,3年ごと更新審査が入るという特徴があるので,かなり長期的なおつきあいになる点も,その他のコンサルタントとは違います。

 では,なぜISOコンサルタントを雇うのでしょうか。

 それは,普通,身内の人間だけでISO9001の認証を取得するのは,非常に困難だからです。事務所内や社内の人間がしかるべき講習を受けて,ISO9001に挑戦しても,ISO9001の専門家ではありませんから,最短コースを歩んで構築できるとは限りません。確かに,自分たちの業務プロセスの改革ですから,自分たちだけで行うのが理想なのでしょうが,実際,上記に掲載したような要求事項を見ただけで気分が滅入るほど,ISO9001取得は困難なものです。
 さらに中小企業ともなると,自社の業務に従事している人間を,この景気の悪い時に,わざわざISO認証取得対策の人間にまわす余裕が無いのが実情です。ならば,専門知識のある外部のコンサルタントを雇ってしまった方が,結果的には効率が良いとも考えられます。

 また,これは目的と手段の取り違えで賛否があるとは思いますが,「こうすれば取得しやすい」というノウハウも,彼らから伝授してもらえます。

 では,実際にはコンサルタントを雇うにはどうすればよいのでしょうか。

 まず,雇うためには,ISOコンサルタントを探し当てなければなりません。単に探すだけならば,ホームページや大手シンクタンク,特殊な例では審査登録機関による紹介といった形で,ISOコンサルタントにたどり着くことはできます。
 しかし,コンサルタントと一口に言っても,実際には玉石混淆で,いわゆる「当たり」「はずれ」という人物がいるのも事実です。現在これらを見極めるポイントは,「いかに自社に近いマネジメントシステムを構築してくれ,かつ社内業務に負担にならないようにISO9001と社内業務を融合してくれるかどうか」にあると思います。ISO9001をただ単に認証取得するだけならば,他社のマネジメントシステムをそのままもらってきて,「やっていますよ」という証拠になる「記録」をうそで作成してしまうということでできてしまいます。ですが,これをやってしまうと,現在の社内業務システムとは全く違うシステムができてしまい,結局はなんのためのISO9001取得なのかということになりかねません。いかに社内業務に近いマネジメントシステムを構築してくれるかどうかが,コンサルタントを選ぶ基準となると思います。
 こういったポイントを見極めることも,ISO9001をスムーズに取得するための大事な作業の一つといえます。

 政治家事務所のISO9001の場合であれば,まず選挙という特殊事情を考慮してくれ,その上で情報公開できる部分と情報公開できない部分の線引きをISO9001上で明確にしてくれるコンサルタントでなければ,せっかく作ったシステムによって,選挙区内の相手に利益を与えてしまう情報を公開してしまうことにもつながります。「ISO9001だからこのようにしてください」というコンサルタントではなく,実状を考慮してきちんと対応してくれるコンサルタントがよいのではないでしょうか。

□導入までの手順と道のり

 ISO9001取得のためには,長い道のりが必要なのはご理解いただいていると思いますが,実際にはどれくらいのものなのでしょう?。

・費用
 あくまで参考ですが,50人ぐらいの中小企業規模であれば,認証だけなら

 審査機関の基本料…約35万円
 審査機関の予備審査料+本審査料…約150万円
 審査機関の登録料…約15万円

 といったところです。もちろん全国一律料金ではないので,これらの額と違うのが当然です。これらに加えて,社内外での教育研修などを行って,取得をより確実にすればさらに費用がかかることになります。
 ちなみに,上で紹介したISOコンサルタントを雇うと,同じく50人規模の企業で約150万円ぐらいです。これも見積もっておきましょう。

・取得期間

 ISOコンサルタントが入った場合の例を示しておきましょう。内容が大まかですが,大体同じような道筋を通ると思います。

 この取得までの期間については,一概に「これだけの期間がかかる」と,断定することはできませんが,同じく50人規模の企業で,「6-8ヶ月」ぐらいが標準的と言えるように思います。
 ただし,近頃の人気のためか,申請先の審査登録期間の方で「○ヶ月待ち」と言われる場合がありますので,必ずしも自分たちの事情だけで取得期間が決まるわけではありません。ご注意を。

<事前準備>
 経営層と管理層向けISO9001理解講習会の開催
 プロジェクトチームの結成
 経営トップとプロジェクトリーダーがISO主任審査員研修へ参加

<品質マネジメントシステムの構築・運用>
 現状の社内システムの調査・ヒアリング
 品質マネジメントシステムの概要の決定
 ISO文書の作成・修正
 現場への適用,現場での運用
 内部監査
 マネジメントレビュー

<審査申請>
 審査登録機関へ審査の申請
 審査登録機関は,品質マネジメントシステムの構築状況・運用実績等から,ISO9001の審査が可能かどうかを判断

<書類審査>
 ISO文書(主にマニュアル)の書類のみの審査

<初回訪問 もしくは予備審査>
 ISO文書の現地での聞き取り審査や現地での運用状況の審査など
(事前に審査を行っておくことによって,本審査での重大な不適合の発生を未然に防ぐ効果がある)

<実地審査(本審査)>
 経営トップやQMR(品質管理責任者)に対して,ヒアリング
 ISO文書の現地での聞き取り審査や現地での運用状況の審査など
 審査登録機関で認証を与えるかどうか,審査結果をもとに判定

<ISO9001認証取得>
 審査登録機関とその機関が属する認定機関から,ISO9001認証登録証が授与
 審査登録機関とその機関が属する認定機関にISO9001が認証登録される


・取得後

 ISO9001を無事取得しても,それで気を抜いてしまってはいけません。ISO9001認証取得後にも,審査はあります。

定期審査 (年1回)

■年に1度,本審査時と同じ審査登録機関によって,システム状況の審査がおこなわれる

更新審査 (認証取得の3年後)

■ISO9001認証取得の3年後に,ISO9001の認証更新審査がおこなわれる
■継続して登録してもよいかどうかの審査をおこなわれる

このようなステップを経て,ISO9001は社内で循環をしていきます。

□まとめ

 「ISO9001とは何か」から「構築・運用・認証取得」までを全三回で見てきました。ISO9001の導入には現在賛否両論があります。が,少なくともこのISO9001を事務所内業務のルール化や組織の見直しなど,効率的効果的に構築できる部分に適用していくことによって,人の出入りが激しい事務所での教育訓練や人材育成,さらには組織の拡大などにつなげていけることができれば,ISO9001は意味のある使い方が可能だと思います。何でも使い方ひとつでそれを活かせたりまたは活かせなかったりします。このISO9001も主体的に取り組み,積極的に改善に取り組んでいけば,かならずや今までの事務所内の問題点を解決するツールになっていくのではないかと思います。

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 ISO9001:2000年バージョンの規格条文は,日本規格協会からJISハンドブック「マネジメントシステム」として本が出版されています。また単行本でISO9001規格条文がのった本も本屋さんなどで購入することができます。一度是非規格条文を見てみてはいかがでしょうか。組織運営を考える上できっと何かしらの知識を得ることができると思います。


鷲津


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