166号 第1会議室 (2002/05/27)up down
   ● 政治家とあっせん利得
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{ 最近,政治とお金にまつわる問題が多くなっています。特に,秘書や元秘書といった形で行政の施策に関与して献金を集める,もしくは裏金として処理するといったパターンが多いようです。
 そこで出てくる言葉に,「あっせん利得」というのがあります。しかし,一般的に「あっせん利得」といわれても,何がどのように悪くて問題となっているのかなかなかわからないのが実情です。
 しかし,政治に携わる者にとっては,一歩間違えれば政治生命をも絶たれてしまう危険性のあるのがこの「あっせん利得」の罪です。これに無知であることは非常に恐ろしいことです。


【あっせん利得処罰法の成立】

 今回,問題になっている「あっせん利得」ですが,2000年11月に成立しています。また法律の施行は2001年にされています。すでに法律が施行されてから1年が経過しました。

 それではここで,この法律のポイントを簡単にまとめます。

1.衆議院議員,参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長,すなわち公職にある者が,国や地方公共団体が締結する売買,貸借,請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し,請託を受けて,その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように,又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき,その報酬として財産上の利益を収受したときは,公務員あっせん利得罪として処罰するものとし,その法定刑を3年以下の懲役。

◆国会議員はもちろんのこと,地方議員であっても行政が工事や何かをする時に自分の知っている業者を使うように「口利き」をして,その業者から見返りにお金をもらってはいけませんということ。

2.国会議員の公設秘書によるあっせん利得については,議員秘書あっせん利得罪として処罰するものとし,2年以下の懲役。

◆上の人たちはもちろん,国会議員の公設秘書も上記のことをしては罪になるということ。

3.公職にある者又は公設秘書が,国又は地方公共団体が資本金の2分の1以上出資している法人が締結する売買,貸借,請負その他の契約に関して,当該法人の役員又は職員に対し,同様のあっせん行為の報酬として財産上の利益を収受した場合も同様に処罰するもの。

◆口利きをするところは,行政だけではなく,国や地方が出資しているところの法人,つまり第3セクターなどで運営をしているところであってもしてはいけない。

4.公職にある者又は公設秘書に対し,1〜3のあっせん行為の報酬として財産上の利益を供与した者は,利益供与罪として処罰するものとし,その法定刑は1年以下の懲役又は250万円以下の罰金。

◆口利きをお願いをする業者も罰せられる。

の4点になります。何か,わかったようなわからなかったような話かもしれません。では,もっと具体的な話を例にして,進めていきます。


【あっせん利得の例】

 ある県が財政危機のため補助金の大幅カットを決定した。前年度までに補助金を支給していた団体を精査して,自立できる団体に関してはゼロにすることにした。
 そこでその県では,介護保険の導入を期に老人ホームに対する補助金をゼロにした。
 これに反発した老人ホームの団体がある県会議員に働きかけ,行政に対して補助金をゼロにしないようにお願いをしてもらうことにし,そのお礼といっては何ですが,団体から献金をすることにした。

 この場合,補助金がゼロからいくらかもらえることになるかは関係がありません。あくまでも,行政の職務上の権限に立ち入って,それに影響を及ぼすような話をして,お金をもらった時点であっせん利得処罰法が適用されることになります。


【政治とあっせん利得】

 さて,読者の方々も,公共事業の入札に政治家が関与して,それに対して建設会社から献金してもらうことはダメだということは認識されていたと思います。しかし,実際には,上記のような例であっても処罰の対象となってきます。これは,今までの政治家による行政への関与の方法を変えることになります。

 この流れを加速させる動きとして,先日鳥取県知事が記者会見の中で,「県議会議員からの提案・要望・意見等の文書化」を方針として打ち出しました。これは,議会というオープンな場では議事録が残りますが,そうではない日常の県職員への要望の時も文書化して,それを情報公開の対象としていきましょうというものです。

 これら2つの事例は,議員の政治活動を根底から変えなければならないほどのインパクトを与えます。
 何故なら,今までの政治活動が有権者や各種団体などの要望を「あっせん」することに主眼を置いていたからです。またそのことは,「あっせん」をしてくれる政治家が良い政治家であるという有権者自身の意識の問題でもあった訳です。
 「あっせん利得処罰法」は,今は国会議員とその秘書の問題がクローズアップされていますが,法律の趣旨に則ったなら地方議員にその影響が強くなります。それは,地方議員が有権者の「生の声」を行政に反映させることが本分であると思われているからに他なりません。しかしこれからは,地方議員が何か依頼された時には,この処罰法を頭に置いて行動することが求められるようになります。

 さて,現在この「あっせん利得処罰法」の規定を強化する法案が国会で審議されようとしています。次回は,その経過について書きたいと思います。
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吉田


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