170号 第1会議室 (2002/06/24)up down
   ● 電子投票
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 全国で初めての電子投票が新見市(有権者19,381人)の市長・市議選で行われました。もうみなさん新聞やTVなどでご存じでしょうが,事前に予想されたより大きな混乱もなく,無事に投開票が進んだと見ていいと思います。

 これはそもそも,地方選挙に限って,投票用紙に候補者や政党の名を書く自書式(有権者が自分の手で名前を書く)以外の方法を特別に認める法律が出来たためです。
 今年2月よりその法律が施行されたことにより,今回の投票が出来ることとなりました。


◇電子投票が行われるようになった原因

 投票方式で,自書式を取っている国というのは実はそれほど多くありません。他の国では,アメリカ大統領選挙で問題にもなったパンチ式や候補者や政党の番号を押すボタン式などの,いわゆる記号式が中心となっています。

●投票におけるバリアフリー
 それには多様な人種の混在により,1種類の言語だけを使用した自書式で投票を行うことが困難であることが理由の一つでもあります。しかし,そのことによりかえって投票におけるバリアフリーを実現していることにもなっています。それは,今回の投票においても,握力が極端に弱い,手の不自由などの障害を持った方々に好評だったことからも明らかであると言えます。

●投票時間の延長と、参議院議員選挙制度の変更
 しかしそれだけが原因ではありません。きっかけとなったのは,98年から行われた投票時間の2時間延長と,2001年の参議院選挙から行われた比例代表の非拘束名簿方式だと言われています。

 この2つにより,
1. 投開票職員の拘束時間の増大による人件費のアップ
2. 投票の区分けの煩雑化による開票の長時間化などがあります。

 開票が始まるのは,投票時間の20:00が終わってからおおよそ1時間後に始まります。これは,各投票所から投票箱を運んでこなければならないということが原因です。そしてそこから実際にある程度の票数が出てくるまでに約1時間かかることになりますから,投票終了から約2時間の間があくことになります。

 つまり,22:00ぐらいから本格的な開票作業となってくると言ってもいいでしょう。当然長引けば,0:00を回ることなどざらにあるということで,その分の人件費や職員の健康面などが課題となります。

●財政上の問題
 確かに選挙が実施されるとなれば,実施にかかるだけの予算を地方は用意しなければなりません。それが,財政が厳しい中で必ずしも今までのように,固定したものとしてみなされるのではなく,減額できるならしておきたいという財政上の問題も大きな要素とも言えます。


◇今回の新見市での取り組みは成功だったのでしょうか。

当初,行政としてのメリットを,

1. 有権者の投票意思の正確な反映ができる(無効票・疑問票の大幅な減少)
2. 選挙結果の迅速な公表ができる
3. 投票率の向上が期待できる

としていました。

 実際には,投開票はほぼ順調で,21:50には電子投票集計は終わったので,開票時間を大幅に短縮することは前述したことと比較しても出来たと言えます。

 また,市内43カ所で投票が行われましたが,投票機が投票カードを読み取れなくなるなどのトラブルもおこりましたが,システム自体の大きな問題ではなかったため,大きな混乱にはなりませんでした。

 このことから,マスコミの報道などでも,有権者のほとんどは「投票は簡単だった」と,やりやすさを評価しています。

 しかし,期待された投票率の向上は,前回の市議選(市長選は無投票)の88・4%を下回る86・8%に。八年前の市長・市議選の92・1%にも大きく及ばず,必ずしも成功とは言えません。しかし,人口が24,000人ほどの市ではありますが,全国的な投票率の下落傾向を考えると,大変高いと感心せざるを得ません。

 新見市では,投票が行われるまでに多くの時間を割いて市民に対してPRが行われていました。昨年は,電子投票に関する住民アンケートを実施。
 また今年は,4月中旬から,各地区自治会の総会や老人クラブなどの各種団体の会合,ショッピングセンターなどで啓発活動が行われ,5月からは,市役所市民ホール,市民センターなど16ヶ所に常設模擬投票所を設置するなど,市民が「電子」や「機械」から連想する「難しいもの」というイメージを排除できるように取り組まれていました。

 こういった陰の努力も見逃せないと思います。


◇今後の課題

 新見市では,比較的成功と評価してもよい結果であったろうと思います。しかし,これを今後の展開を考えた時には,やはりまだまだ課題があります。

 時間短縮については,ハッカーを警戒して,今回の地方選挙電子投票特例法では投票所と開票所を即時に結ぶ「オンライン」方式を採用しなかったので,得票を記録した電子記録媒体(コンパクトフラッシュ)を開票所まで車で運んでいます。これにより最大約40分の運搬時間が掛かっています。
 これに法的な制約もあって,不在者投票は従来の「自書式」投票にせざるを得なかったため,電子投票だけなら開票に約20分しか掛からないのに,不在者投票開票には職員61人が携わり,1時間半以上も時間を掛けざるを得ませんでした。
 それでも従来の4時間半を大きく短縮したことにはなりますが。

 コスト面でも,今回は初めてということで,業者が採算を度外視して投票機154台(予備機を含む)のレンタル料を250万円という破格の安さで落札しましたが,これが今後も続くかとなると必ずしもそうではありません。

  結果として,不在者投票の電子化,オンラインと安全性,負担の軽いレンタル制など,早急に検討すべき課題が見つかったのが今回の選挙を通しての結果であったろうと思います。


吉田


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