174号 第1会議室 (2002/07/22)up down
   ● あっせん利得と政治
→office-SPCタイトルページ



 去る7月19日に与党3党提案による改正あっせん利得処罰法が可決され,成立しました。これにより8月下旬には施行されることとなりました。

 さて,この改正あっせん利得処罰法はそれまでのモノと比べて,どのような点が改正されたのでしょうか?。ここで参考までに,前回166号のおさらいをしてみましょう。

 これまでの法律のポイントは,

---------
1.衆議院議員,参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長,すなわち公職にある者が,国や地方公共団体が締結する売買,貸借,請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し,請託を受けて,その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように,又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき,その報酬として財産上の利益を収受したときは,公務員あっせん利得罪として処罰するものとし,その法定刑を3年以下の懲役。

◆ 国会議員はもちろんのこと,地方議員であっても行政が工事や何かをする時に自分の知っている業者を使うように「口利き」をして,その業者から見返りにお金をもらってはいけませんということ。

---------
2.国会議員の公設秘書によるあっせん利得については,議員秘書あっせん利得罪として処罰するものとし,2年以下の懲役。

◆上の人たちはもちろん,国会議員の公設秘書も上記のことをしては罪になるということ。

---------
3.公職にある者又は公設秘書が,国又は地方公共団体が資本金の2分の1以上出資している法人が締結する売買,貸借,請負その他の契約に関して,当該法人の役員又は職員に対し,同様のあっせん行為の報酬として財産上の利益を収受した場合も同様に処罰するもの。

◆口利きをするところは,行政だけではなく,国や地方が出資しているところの法人,つまり第3セクターなどで運営をしているところであってもしてはいけない。

---------
4.公職にある者又は公設秘書に対し,1〜3のあっせん行為の報酬として財産上の利益を供与した者は,利益供与罪として処罰するものとし,その法定刑は1年以下の懲役又は250万円以下の罰金。

◆口利きをお願いをする業者も罰せられる。

---------
の4点でした。


 そこに今回は,
---------
5. 議員秘書あっせん利得罪の主体に,衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は参議院議員の政治活動を補佐するものを加える。

◆いわゆる私設秘書を含むということ。
---------

が加えられました。これはそもそも,口利きで多額の報酬を得た加藤紘一・元自民党幹事長の元事務所代表が,脱税容疑で逮捕されたが,私設秘書を対象外としていたため適用されなかったという現行法の欠陥が浮き彫りになったからです。

 つまり今回の改正は,法律の適用範囲を,国会議員の「政治活動を補佐するもの」にまで広げた。当然,私設秘書の口利きビジネスも処罰の対象となるということです。


□あっせん利得はなくなるか?

 さて,これで本当にあっせん利得というものがなくなるのでしょうか。

 ある副大臣は「入学あっせん」の責任を取って辞任しました。しかし,この処罰法には該当しません。
 この手のあっせんは,政界の政治風土と言っていいほどまん延しています。さらに,合法性や倫理的なモノは別にしても,加藤氏の元事務所代表や,あっせん収賄罪に問われた鈴木宗男衆院議員の件に限らず,民間でのあっせんの認識も「ありがちなもの」なのです。

 例えば,国家公務員の労組が,組合員を対象に実施したアンケート調査によると,省庁の職員の2割が過去3年間に,許認可や補助金などに関連して,政治家や秘書の働きかけを受けた経験があるという結果も出ているくらいです。それが民間のモノとなれば,水面下でどれだけのあっせん(口利き)があるのか,恐ろしくなります。

 しかし,民間へのあっせんを取り締まることは出来ません。それは,日常生活の中で誰もが,「少しでも安くモノを買うためにお願いする」といったことを,政治家ではなく,そういったつながりを持った人に頼んでいる実態があるからです。

 それは,例えば「親戚の農家に米を安く譲ってもらう」「友人を通じて洋服を社員価格で買ってきてもらう」といった風潮です。
 そのことは,日常の経済活動の中ではありふれたモノとして認識され,それを誰も問題にはしませんし,またそれには規制も出来ません。ただ,そのことを政治家に頼むことが,本来の政治の姿であるのかということを,有権者は認識しなければならないと思います。

 国民の声を行政に反映させることは,重要な政治活動であり,それ自体は否定すべきではありません。しかし,特定の個人や団体の利益のために口利きをし,それによってカネを得るような行為は,本来の政治活動とは言えません。そのことを,すべての政治家も肝に銘じるべきだと思います。

 今回の改正案ですべてが解決するわけではありません。いろいろなところで問題とされていますが,地方議員や首長の秘書は,今回の改正でも対象外とされました。
 しかし,地方分権が進めば,公共事業に関する権限も,国から地方に移りますし,更に財源まで移ればどのような事態になるのか目に見えてきます。そうした状況を踏まえて,この法律についても検討していかなければならないでしょう。


吉田


バーチャル選挙対策本部 購読

 発行は毎週月曜,料金は無料です。
 配信開始をご希望の方は,こちらのフォームへメールアドレスを入力してください。

■メールマガジン登録
電子メールアドレス(半角):
 バーチャル選挙対策本部は、まぐまぐ公認「殿堂入りメールマガジン」です。この機会にぜひご購読を!。
 
Powered by Mag2 Logo

This page was made by office-SPC
→office-SPCタイトルページ